10/50 コンパチシングルモノラルアンプ
寸 法 | 横幅(W)43cm×高さ(H)24cm×奥行き(D)32cm |
重 量 | 20.2kg |
使用真空管 | 56-10/50-81 |
構想は大分昔から持っていたのですが、なかなか実現しませんでした。特注していたファインメットトランス(「ファインメット」は日立金属(株)の登録商標です。)が一昨年(2012年)10月に出来上がってから、いよいよ計画を具体化させました。昨年(2013年)7月からシャーシ加工を開始して、昨年末にやっと加工が終わり、今年(2014年)から配線作業に取り掛かり、5月6日にやっと配線が完了しました。それにしても出力高々数ワットのアンプにとてつもない時間とお金が掛かるものです。しかし、50を使うにはこれくらい奢らないと50が可哀想です。また50本来の音も出てこないでしょう。現在試聴しながら微調整しています。将来的に、信号系のトランスもファインメットとするかどうかはまだ検討中です。
シャーシは手元にあったリードの旧製品ですが、天板が3mm厚のアルミで加工に難儀しました。トランスは、信号系は全てタムラを使用して、電源系は全てファインメットコアの特注品です。OPTのF2004が8Ω端子と16Ω端子しかなく、4Ω端子がないので、Zp10kΩとすることができないことから、10はZp5kΩで動作させていますが仕方がないでしょう。
設計ポリシーは、音質(芯の強さ、キレ、繊細な部分の表現力)を第一に考え、以下のとおりとしました。
(1)50には、やはり81を組み合わせる。(2)段間はインターステージトランスを使用する。(3)ケミコンを一切使用しない。電源系はオイルコンのみ使用。(4)電源はチョークも含めてファインメットコアのトランスを使用して、半波整流とする。(5)フィラメントは交流点火とする。(6)アースを重視する。
真空管についての解説:
・前段は、56を基本とし、WE244A、そして227/27も使用可能としました。
・出力段は、210/10と250/50が使える様にしました。801/801Aもより高圧動作でも使えます。ご先祖の純タングステンフィラメントのUV-202やVT-14もソケットアダプターを使用すれば使えます。折角なので欲張って、WE252AとWE300A/B、それからWE205Dも使える様にしました。さらに、VT-52や45A、はたまたソケットアダプター使用でDA30も使用可能です。さらに他の球もいろいろと適用できそうで楽しみです。
・整流管は、281/81を基本にして、トリタンの216Bも使用可能で、もちろんWE流に210/10や250/50も使用可能です。
スイッチが全部で12個あり、球の設定毎に一々これらを切り替えてやる必要があるため、ゴチャゴチャしてしまったのですが仕方がありません。いずれにしてもこれらの全ての球を差し替えて使用することで、膨大な数の組み合わせの音を楽しむことができます。
交流点火に由来するハム音が若干ありますが、許容範囲内です。出てくる音色には替えられませんのでそのままとします。着せ替え人形宜しく、これらの球を差し替えて、トリタンの輝きやSTやナスの違いと姿態を楽しみ、また組み合わせの違いにより出てくる音の違いを様々楽しむのが至福のひとときです。
色々な球を取っ替え引っ替えして聴いている内に気がついたのですが、使用する球に因って出てくるハム音が異なることが興味深いです。ハム音の大小や、低音寄りとか高音寄りとかだけでなく、音の質感というか感触も確かに違います。慣れてくるとハム音だけで出力管の区別ができるのではと思います。それが球の持つ音色ということなのでしょう。WE300AとWE300B刻印とSTC4300Aも、それらのフィラメント構造の相違に因るのか、全て違い個性があるところが面白いところです。
最も基本的な組み合わせ。 Raytheon 50 4ピラーST と Raytheon 81 4ピラーST 。ST19型のボリュームがたまらない。
Raytheon 50 4ピラーSTオレンジプリント と Raytheon 81 4ピラーST 。こちらの方が内部のボックスプレートと4ピラーステムがよく見える。
こちらはナス管の組み合わせ。 RayX 250 と Raytheon 81 4ピラーナス。ナス管のS21のボリュームも気に入っている。板状プレートなのでフィラメントが横から丸見え。
こちらは、Cardon 250 ナスメッシュ と 281 ナスメッシュ の組み合わせ。フィラメントが透けて見えるメッシュプレートが好きです。出てくる音としても良い。
こちらは、Sylvania 50 ST16 と RCA 81 ST 。通称ミニ50。ST16でも小さく見える。
こちらは、RCA UX-210 ナス と RCA 81 ST の組み合わせ。トリタンで明るく輝く。
こちらは、RCA VT-25 ナスタイトベース と RCA 81 ST の組み合わせ。トリタンで明るく輝き、タイトベースも綺麗。
こちらは、Hygrade Sylvania 210 タイトベース と Arcturus 81 ナスブルー の組み合わせ。こんな遊びも楽しめる。
こちらは、Sparton 56 ナスメッシュ と 川西 C-202A ナス と RCA 216B ナス の組み合わせ。トリタンが2本輝くのも楽しい。この球は、見た目も音も独特の味がある。
こちらは、サイモトロン UX-202A ST16 と RCA 81 ST の組み合わせ。
こちらは、RCA 801 と RCA 81 ST の組み合わせ。タイトベースとグラファイトプレートに注目。
こちらは、de Forest 210 ナス と de Forest 281 ナス の組み合わせ。当然酸化物塗布型フィラメント。
こちらは、Sylvania 210 ナスメッシュ と RCA 81 ST の組み合わせ。メッシュプレートが好きです。
こちらは、Silvertone 210 ST19 と RCA 81 ST の組み合わせ。10のST19型は見た目が堂々としており、50と遜色ない。
こちらは、RCA UV-202 と RCA 81 ST の組み合わせ。時代を遡って先祖の音と聴き比べ。フィラメントはトリタンではなく、純タングステンなので白っぽい発光色。
こちらは、GE VT-14(CG1162) と RCA 81 ST の組み合わせ。さらに時代を遡って元祖の音と聴き比べ。100年近く昔の球がモリブデンプレートを赤くして頑張っているのに感動。
こちらは、WE VT-25 と RCA 81 ST の組み合わせ。タイトベースが綺麗。
こちらは、Silvertone 45A と RCA 81 ST の組み合わせ。ST16型が小さく見える。高圧動作のためか45よりも音は良い。
こちらは、Sparton 56 ナスメッシュ と 至宝 WE 252A メッシュ と Sparton 281 ナス黒メッシュ の組み合わせ。これは最高の組み合わせでしょう。
こちらは、神様 WE 300A と Raytheon 81 4ピラーST の組み合わせ。これも最高の組み合わせ。
こちらも、神様 WE 300B 刻印 と Raytheon 81 4ピラーST の組み合わせ。これも最高。
そして、アダプターソケットを使用した WE 205D と RCA 81 ST の組み合わせ。キューピー頭の丸球には惹かれます。音も良い。
シャーシの内部写真は勘弁して下さい。
「第一回10/50コンパチアンプヒアリング会」
そして、過日(2014年9月27日)、土曜日の午後を費やして、永年の友人1名をお招きして、「第一回10/50コンパチアンプヒアリング会」を開催しました。CDプレーヤー直結として、球の構成は、初段がRaytheonの564ピラー、整流がRCAの81ST共に固定として、出力管を10系から50、そしてその他へと取っ替え引っ替えして、音の出方を確認し、また音の違いを楽しむ作業を繰り返しました。
初めは、用意した中では最も音質が劣ると予想されたSylvaniaの10Y(トリタン、リーフマーク付き)です。
Sylvania 10Y
彼が、開口一番、「10のトリタンは高音がキンキンするという話を聞きますが、そんなことは全くありませんね。」というお褒めの一言で、まずは一安心しました。
次は、Wizard 10 ST19型
次は、210 メッシュ
メッシュがお気に入りの様です。
次は、Hygrade Sylvania 210T
次は、GE VT-62 グラファイトプレート
次は、川西 C-202A
これもお気に入りの様です。
次は、RCA(GE) UV-202 トップシール
次は、CG1162(VT-14)
フィラメントは、上のUV-202と同様にトリタンではなく、純タングステンなので煌煌と輝く。およそ100年前の第一次世界大戦中に製造された球が活きているのも奇跡だが、モリブデンプレートをほんのりと赤くして頑張っている姿には感動すら覚える。
次は、50系に移って、
Philips 50(米国製)
次は、Raytheon 50 4ピラーオレンジプリント
次は、250 メッシュ
次は、Silvertone 45A
次は、Sylvania VT-25A
次は、WE VT-25A
次は、RCA VT-52
次は、WE VT-52
次は、WE 205D
最後に、STC 4300A
と聴き比べました。
長時間で疲れましたが、友人の結果を総括すると、全体を通しての彼のお気に入りは、上から順に、
1位 WE 205D
2位 250 メッシュ
3位 川西 C-202A
4位 CG1162(VT-14)
とのことでした。
各球の動作条件やCDソフトの種類に依っても異なる結果となったと思いますが、総じて、当方も納得できる順位です。面白いのは、ご先祖のUV-202を通り越して、元祖のCG1162(VT-14)が堂々とランクインしていることです。息子もCG1162(VT-14)が良いという意見で、これは予想外の嬉しい誤算でした。そして、意外なことに、満を持した本命STC 4300Aがランク外ということで、次回はもっと動作条件等を詰めた上でリベンジしたいと思います。
今後、トランス類のエージングをさらに進めた上て、今回時間が無くて聴けなかった球なども含めて、また第二回のヒアリング会を楽しみにしたいものです。
「第二回10/50コンパチアンプヒアリング会」
過日(2018年1月13日)、土曜日の午後に、息子の友人2名をお招きして、「第二回10/50コンパチアンプヒアリング会」を開催しました。CDプレーヤー直結として、球の構成は、初段がRaytheonの564ピラー、整流がRCAの81ST共に固定として、出力管を無銘の250メッシュとCunninghamのCX-350とRCA/Cunninghamの50ST刻印とを挿し替えて、そしてSONYとDENONの当時の逸品CDプレーヤーを取り替えて、音の違いを楽しんでもらいました。客人はSONYが好みで、息子はDENONが好みの様です。
CunninghamのCX-350
RCA/Cunninghamの50ST刻印
今回は、客人に次の予定が入っているとのことで、余り時間がとれずに短時間で終了してしまいましたが、次回はもっと時間がある時に改めて続きを行いたいものです。
(2014/06/29)
(2014/08/31)
(2014/10/26)
(2018/02/25)