6D5 電力増幅用傍熱3極管

オリジナルナインの蔭に隠れて、もう1つ存在していた幻の球、電力増幅用傍熱3極管6D5RCA/Cunninghamからの最初の発表時には存在していたが、発売時にはリストから抜け落ちてしまい、市販されることがなかった球なので、かなりの希少管。私の宝物の1本。後になって、他社から電気的に同一の6D5G6D5MGが製造された。

規格は下記のとおり、丁度4542/6F6の3結との中間的な感じで、しかも6.3Vの傍熱管でバイアスも深くて出力も1.4Wも出せる(6L6の3結と同じ)ということで、一体どんな音が出て来るのか非常に興味をそそられるが、貴重な球なので音出し・通電は厳禁して眺めるだけで我慢している。

型 名 Ef/V If/A Ep/V Eg/V Ip/mA Gm/μS μ Rk/Ω Ri/Ω RL/Ω Pp/W Po/W ベース 備 考
245/45 2.5 1.5 180 -31.5 31 1850 3.5 1000 1800 3500 10 0.78 UX  
250 -50 34 2000 3.5 1500 1750 3900   1.6  
275 -56 36 2100 3.5 1500 1670 4600   2  
42(T)/6F6(T) 6.3 0.7 250 -20 31 2600 6.8 650 2600 4000 10 0.85 UZ  
6D5 6.3 0.7 275 -40 31 2100 4.7 1300 2250 7200   1.4 US  

 

RCA/Cunningham 6D5

外観は6F6そっくりだが、フラットトップとなっている。当然ながら刻印タイプ。

トップからの眺め。

 

 

その後、有坂英雄さんの遺品を図らずも入手することとなった。氏の生前に下の収納箱を実際に拝見させて頂き、手にも取らせて頂いた時の感激と、氏の真空管に対する情熱と愛情に感服するとともに、当方も少しでも見習わなくてはと自戒したことを思い出しながら、氏の温厚なお人柄を偲びつつ、是非とも未使用のまま次世代に引き継いで行きたいと思っている。

6D5については、有坂英雄著「眞空管談義」pp.15〜18『13.幻の”6D5”をめぐって』及び「続 眞空管談義」p.10に詳しい。私家版の自費出版本で非売品であるが、ありがたいことに、電気通信大学に寄贈されて、正・続編が合わさって加筆修正された上でデジタルアーカイブ(UEC コミュニケーション ミュージアム)「13. 幻の"6D5"をめぐって」pp.21〜24としてウェブで公開されているので、そちらを参照されたい(他に、p.26やp.67にも出てくる。なお、p.67には、下の収納ケースも出てくる。こちらの方が誤記も修正されていて、かなり加筆されているのでお薦め。)。

6D5が正式に発売されなかった経緯について、氏の推測を具体的に少しまとめると、メタル管の最初の発表時(「Electronics」1935年5月号、「Radio news」1935年6月号)には、6品種(6A8,6J7,6K7,6H6,6C5,6D5)だったものが、実際の発売時には、9品種(6A8,6L7,6J7,6K7,6H6,6C5,6F5,6F6,5Z4)だったことを根拠の1つとして、RCAでは、熱損失(発熱)が大きい5極出力管(6F6)と整流管(5Z4)の放熱の問題(対策)に自信が持てずにいたところ、「6F6が時代の趨勢に押されて商品化されることとなり、更に6F6を外部で三極管接続にすれば6D5に似た特性が得られることもあって結局のところ6D5には出番がなかった」(引用)と結論づけている。当方も氏の推測のとおりと思う。

6D5の収納ケース。木製の収納箱の表にはRCAのエンブレムが取り付けられており、蓋を開けると内部には6D5が2種2本(左側がドームトップで右側がフラットトップ)納められている。

底板には、ご本人のコールサインとアルファベットのサイン(署名)が刻印されたプレート(真鍮製でしょうか)がある。

左のドームトップタイプ。こちらはプロトタイプと思われる。

 

右のフラットトップタイプ。こちらが発売直前タイプと思われる。

 

2種類の6D5を並べてみた。左がドームトップタイプで、右がフラットトップタイプ。

 

 

 

(2026/02/22)

 

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