2HF 高周波増幅用複合直熱4極管

 

 2HFは、3NFと共に1926年に登場した、Hoch Frequenz(高周波)増幅用を命名の由来とする、ラジオ用の真空管で、私の宝物の1本。当時ドイツではラジオの税金が真空管の本数に応じて課税されていたそう(未確認)なので、高周波増幅用に直熱タイプのスペースチャージグリッド4極管(RE074d相当)2本を1本の真空管の中に纏めて押し込んで、ついでに何と抵抗2個とコンデンサー1個も封入してしまった。Loeweでは、"OE333"という3NFを1本用いた単球ラヂオ以外にも"2H3N"という2HFを1本と3NFを1本用いた2球ラヂオを同時に売り出しており、それに用いられた。いずれにしても約100年前の真空管が残っているのは天晴れと思う。

 複合管の元祖で、それどころかICの元祖と思う。なお、内部の真空管が1本だけ断線した場合でも、全部を新たに買い換える必要はなく、管を切り開いて、フィラメントを張り替えて、再度内部を真空引きして再利用するサービスも行っていたとのことだ。

 

Loewe 2HF

内部はどの方向から見ても飽きない。本当にドイツのガラス細工の芸術品を見る思いだ。足ピンは、6本で3本のバヨネットピンが付いている。管壁には白色でLoeweのマークと管名と規格がプリントされている。Ef=4V,If=0.7A,Ep=90V,Eg1=10〜30Vとある。

内部構造のアップ。ステムから2本のガラスピラーを立ち上げて、それで各パーツを支持している。ガラスビードに支持された水平円筒プレート(フィラメントは一直線)の4極管が左右に2組設けられている。見えづらいが、各真空管の間の中央部にはコンデンサーが1本とその両側に抵抗が2本設けられていて、これらは1つずつガラス管中に封入して中を真空に封じている。ここまで徹底してやるのがドイツ流。これらコンデンサー・抵抗類と真空管の間には、緩い円弧状としたマイカ板が1枚片側だけに設けられている。ステムはプラチナ。

工業生産品でこれだけのものを造り上げるというところにドイツの国民性と誇りとそれらによってしっかりと支えられた確かな技術を感じる。脱帽。

ベース部底面からの眺め。ベースの底に蓋が付いている。

 

こちらは別の球。赤字のプリントが僅かに残存している。内部の構造は全く同じ。

ベース部底面からの眺め。ベースの底の蓋はない。

フィラメントを点灯した状態。左右の電極に灯る灯りを眺めていると幻想的な気分に浸れる。

 

 

(2024/11/24)

 

            規格表 トップシールチューブ コレクター球 総目録 真空管トップ トップ