3P41 3P50 送信用傍熱5極管

 

 3P41日本無線(JRC)が、3P50東芝が各々開発したプレート損失60Wの送信用の空冷5極真空管で、共に、一般用のみならず漁業用などの船舶無線用などに用いられた。周波数30MHzまで使用でき、第3グリッド変調が可能となっている。共に、ヒーター電圧は12V(12.0Vであって、12.6Vではない。)、電流は1.25A。ただし、「東芝送信管」(1980年3月版)によると、「 * 本管は移動機器、船舶用など、電源変動率の大きい送信機に使用可能なよう、陰極効率を高めてありますのでヒータ電圧は定格に-10%〜-15%でも動作可能です。従って安定な使用状態では低め、例えば10.5V程度に設定することは長寿命化の点で有利です。 ** 第3グリッドキャップは無接続で使用する場合は、かならずVT-29060を使用し、キャップのままで、無接続にしてはいけません。」と記載されており、「全長135mm×最大直径52mm、重量約130g」、「「最小加熱時間 60 sec」及び「第1グリッド回路抵抗は、固定バイアスで使用する場合は、100kΩ以下にして下さい。」とも記載されている。

なお、足は大型UVにさらに中央にもピンがある様な独特の5本足である。これは、元々、日本無線は、戦前よりドイツのTelefunkenから真空管の技術導入をしており、第3グリッド(G3)変調も同様に導入した歴史的経緯があり、足ピンもTelefunkenRL12P35と全く同じ形を採用したために、ソケットも同じ物が必要となった。当然に真空管の発売と併せてソケットも発売された。

両者は、厳密にいえば規格は相違するが、同等管ということで一緒に紹介する。プレート損失で比較すれば、丁度4P55(4P56)(プレート損失120W)の半分の様な球だが、ヒーター電力は大分強力でほとんど変わらない(4P55が6.3V2.4Aの15.12W4P56が12V1.5Aの18Wに対して、3P413P50が12V1.25Aの15W)のが面白いところで、そのせいか重厚感のある音に感じる。低圧動作で3結で比較して試験した限りでは、動作点によっては3P50の方が電流が若干流れやすい傾向が見られたものの、動作点を選ぶなり、固定バイアス電圧を切替可能とすれば、そのまま差し換えて使用可能と思われる。ただし、第3グリッドは、トップのみならずベースシェルにも引き出されていることから、第3グリッドに電圧が印加される様な使い方の場合には注意が必要である。

 

日本無線(JRC) 3P41

元箱。

小型ではあるが、厚めのガラスと重量感があり、流石に送信管だけのことはある。プレートは、最大損失60Wで、2枚のΩ状と8枚のコの字状のアルミクラッド鉄板(?)をリベットで留めて放熱フィンを併せて形成しており、その上下を各2個のタイトの段付きアイレットを介してプレート支柱(ピラー)が通っており、その上下をさらにアイレットの段部を通す穴付きマイカ円盤で挟んで固定している。内部には、並列に2本の太いヒーターが封入されている。管壁には、四角枠で囲まれたJRCのマークと管名が白字でプリントされていて、その下方には1本毎の製造番号もプリントされている。ダブルゲッターで、ベースはアルミニウム。ステムはトップがフラットなツマミステム。

下部からの眺め。アルミニウムベース。ベース底面はタイト製。

上部からの眺め。トップにはプレートとG3が引き出されている。トップの管壁に〇にPとG3と白でプリントされている。精巧に造られているG3のシールド構造が上部から見え、その丁度真ん中に円形に凹部が設けられており、そこにトップガラス部分の内側に設けられた凸部が収まり、内部電極を固定することで、(船舶の揺れなどに伴う)振動や衝撃に耐える構造となっている(同様の構造は一部のメーカー製の845Wなどにも見られる。)。

 

こちらはクロムメッキベース。プレートと第3グリッドの金属材料が異なる他は上の球と全く同じ構造。

下部からの眺め。クロムメッキベース。

上部からの眺めもG3のシールド構造の金属材料以外は全く同じ。

 

 

東芝 3P50

小型ではあるが、厚めのガラスと重量感があり、流石に送信管だけのことはある。プレートは、最大損失60Wで、2枚のΩ状と4枚のコの字状の金属板をスポット溶接で留めて放熱フィンを併せて形成している。内部には、並列に2本の太いヒーターが封入されている。管壁には、Toshibaのマークと管名が赤字の四角の囲み枠と共にプリントされていて、1本毎の製造番号もプリントされている。精巧に造られているG3のシールド構造が上下に設けられており、下部のタイト円盤上に設けられた金属板上のプレートの両側面に位置する部分と、上部のシールド構造から腕状に延びガラス管壁に延びてマイカで固定する部材の腕部との間にタイト製のピラー(支柱)を各1本立てて固定すると共に、そのタイト製のピラー(支柱)にプレートからの金属タブを巻きつけて、各電極を固定することで、(船舶の揺れなどに伴う)振動や衝撃に耐える構造となっている。円盤下部のステム側には第2グリッド(G2)の放熱フィンも設けられている。片側のダブルゲッターで、ベースはクロムメッキ。ステムはボタンステム。

下部からの眺め。クロムメッキベース。G3からの引き出し線がベースシェルに半田付けされているのが見える。

上部からの眺め。トップにはプレートとG3が引き出されている。トップの管壁にはPとG3と赤でプリントされていると共に、プレートキャップの基部分には赤いペイントがリング状に塗られている。精巧に造られているG3のシールド構造が上部から見え、そこから延びた腕部とガラスへの固定マイカも見える。

 

元箱。

こちらは別の球。管壁へのプリントの代わりに、Toshibaのマークと管名がベース部にシールで貼付されており、1本毎の製造番号のプリントも無い。あとは上と全く同じ造り。

下部からの眺めも全く同じ。

上部からの眺め。トップの管壁にPとG3と赤でプリントされているだけで、プレートキャップの基部分への赤ペイントが無い。

 

こちらも別の球。構造は上の球と全く同じ。

下部からの眺めも全く同じ。

上部からの眺めも全く同じ。

 

東芝 3P50/3P41

別の元箱。3P50だけでなく3P41も併記されている。

こちらも別の球。管壁には、Toshibaのマークと管名(3P503P41の併記)が赤字でプリントされていて、1本毎のロット番号のプリントも無い。構造は上の球と全く同じ。

下部からの眺めも全く同じ。

上部からの眺めも全く同じ。

 

こちらも別の球。管名の併記も構造も上の球と全く同じ。

下部からの眺めも全く同じ。

上部からの眺め。プレートキャップの先端部分に赤ペイントが塗られているだけで、トップの管壁のPとG3との赤プリントが無い。構造は全く同じ。

 

 

 

(2025/05/25)

 

 

          規格表 41ナンバー 50ナンバー 総目録 真空管トップ トップ