WE308B 変調、低周波大出力電力増幅用直熱3極管

 

 発振、変調や送信用の出力管として開発されたWE212Dが、1937年になって、トップチップが無くなり、トリタンフィラメントになり、新しい設計のプレート構造等になってWE212Eとなるに伴って、新たに、μの低い(16→8)、変調、低周波大出力電力増幅用として開発された。大塚久氏は、「クラシック・ヴァルヴ」で「何故このような旧式設計の真空管が再登場したのか理解に苦しむところです。」(p.204)と書いているが、ものの本によれば、大出力フライトデッキアナウンスシステムに用いられたとのことで、米海軍の空母の飛行甲板上で飛行機のエンジン音や離着陸時の騒音や風雨の音に負けずに、甲板員に対して空襲警報や重大放送を放送するためには、これだけの大型管が必要だったのだろうと想像する。WE308Bが開発された1937年というのは、丁度飛行機の発達に伴い空母が重きを置かれ始めた時期と符合する。

 フィラメントはトリタンとなったもののWE212Dと同様に14V6A(=84W!)、プレート損失も同様に250Wという途轍もない球だが、堂々とした姿に惹かれる。100Wクラスの同様な用途に用いられた845が可愛く見える(一番下の写真)。私が所持している球の中でもトップクラスの大きさ。私の宝物の1つ。

 これだけ大きい球だと、プレート電圧に1500V位印可して(規格上はシングルで50W出る!)、さぞかしエネルギッシュで豪快な音がするかと思いきや、そう単純でないところがオーディオの面白いところ。ゆとりのある伸びの良い音がして好きな球だが、実際に使うとなると躊躇してしまう。

型 名 Ef/V If/A Ep/V Eg/V Ip/mA Gm/μS μ Rk/Ω Ri/Ω RL/Ω Pp/W Po/W ベース 備 考
211 10 3.25 1000 -61 53 2750 12     7600 75 12 BigUV  
845 10 3.25 1000 -145 90 3100 5.3   1700 6000 100 24 BigUV  
WE212D 14 6 1250 -40 200 8500 16   1900 3000 250 40 JumboUV  
WE308B 14 6 1500   167 7500 8   1070   250 50 JumboUV  

 

WE308B

元箱。"8 44" (1944年8月)とある。丁度太平洋戦争末期で、同年6月のマリアナ沖海戦と同年10月のレイテ沖海戦の間の時期に製造されたことになる。

元箱に梱包されている様子。

球の設計がWE212Dとは全く異なる。外見的には、WE212Eと瓜二つでグリッドピッチが異なるだけと思われる。真鍮ベース部分に、"WESTERN ELECTRIC MADE IN U.S.A"と”308B”と黒色で印字されている。直径88mm 全長31.5cm(足ピン除いて29cm) 重量688g

トップ部分のアップ。上にセラミックサポート。フィラメントを、4本吊りの大きなコイルスプリングで保持している。表面処理されたメタルプレート。

ボトム部分のアップ。印字部分の上に「米国海軍」の錨マークが赤字で印字されている。ベースの底はベークライト。足ピンは、WE212D/Eと同じ。

トップからの眺め。トリタンなので煌々と輝く。

 

WE308B845とを並べてみた。

 

 

(2024/02/25)

 

 

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