210/10/10Y/VT-25(トリタンタイプ) 送信用直熱3極管

 

 210は、GEVT-14CG-1162、さらには、UV-202の後継・バージョンアップ版で、フィラメントを純タングステンからトリタンにして、フィラメント電力を7.5V1.25Aに低減させつつも、プレート損失を12W許容する球として開発されました。その後、10となり、外形もSTとなりました。軍用ナンバーでは、VT-25となります。紛らわしいことにRaytheon、後になってWEなどがオキサイドコーティング(酸化皮膜型)フィラメントでVT-25を製造していますが、これはフィラメントがVT-52と同じ7V1.18Aの球で10系とは厳密には規格の違う球です。(但し、細かいことを言わなければ差し替えられます。)さらに紛らわしいことにde Forestは酸化皮膜型の410/510を出して、他社(Raytheonも含む)でも追随してオキサイドコーティングの210/10を出しました。これらはオキサイドコーティングですが、当然210/10と同じ規格です。その後のVT-25AはオキサイドコーティングのVT-25がトリタンのVT-25(=10)と紛らわしいために区別する目的でサフィックスを付けた様です。手頃な出力が得られるため、PAアンプのパワー管や民生用・軍用の送信管として、我が国を含めて世界中で広く使われました。

 以上、Tさんのご教示(http://blogs.yahoo.co.jp/fareastern_electric)により修正しました。Raytheon210/10VT-25とを所持していますので、本当にフィラメント定格等が異なるのかいずれ確認したいと思っています。

 なお、Epを600Vまで使用可能とした球が、801/801A/VT-62となります。

 

大きさ比較

左から、CG-1162RCA UV-202 BB TT、 RCA UV-202 Bakelite Base、 RCA UX-210

進化につれて、外囲器(ガラスバルブ)と併せてプレートも大型化しているのが判る。フィラメント電力は逆に小さくなって改良されている。

何れにしても、外形もナスあり、STあり、フィラメントもトリタンあり、オキサイドコーティングあり、ベースも黒色ベークあり、マイカノールあり、タイトあり、と様々なバリエーションが楽しめて、出てくる音色の違いも楽しめるという、非常に気に入っていて興味深い球です。そのため、あるとついつい買ってしまい、自分でも今現在どれだけあるのか良く解らなくなってしまいました。

 

 

初めに、トリタンのナスタイプを紹介します。

 

RCA UX-210

小型丸形プレートの旧型。上下にガラスビードを設けた電極支持。見えづらいがトップにRCAのマーク。ゲッター膜は一部レインボー。初期型と思われる。

 

 

別の球の元箱。

上の球と同じ構造の別の球。

上からの眺め。

 

 

RCA 10

これは下の球の元箱ではないかも知れないが、元箱入りということで購入した。

 

RCA/Cunningham 10

黒化角形プレート。上部ガラスビードサポート。

 

 

RCA VT-25

軍用仕様。ガラス管壁に"10"、ベースは、タイトベースにRCAのマークと"VT-25"。黒化角形プレート。上部ガラスビードサポート。上のRCA/Cunningham 10と内部構造は区別が付きません。ベースのみタイトとした様。しっかりスッキリ造ってあり、好きな球の1つです。

 

 

Taylor VT-25

軍用。元箱には、DEC.21.1940とある。赤っぽいがマイカノールベースと思われる。黒化角形プレート。上部ガラスビードサポート。上のRCA/Cunningham 10と同様の内部構造。しっかりと造られている。

 

 

Marathon MX-210

刻印プレート。

ゲッターが多くて見づらいが、ガラスビード支持、旧型の丸形プレート。

 

 

unknown 210 (多分 US NAVY. VT-25)

タイトベース。ガラスビード支持、角形プレート。

 

 

Hygrade Sylvania 210

1934年発売の送信用。管壁にSylvania210のプリント。グラファイトプレート。セラミックベース。十字型のセラミックサポート。ガラスも厚いのか重い。

 

 

川西 C-202A

新旧の元箱比べ。斜め上面。左が旧箱、右が新箱。

新旧の元箱比べ。側面。左が旧箱、右が新箱。

 

旧箱。厚紙で大型。錨マークと十一號發振電球と印刷されている。旧帝国海軍御用達。規格/ 繊條電壓・・・7.5V 繊條電流・・・1.25A 陽極電壓・・・400V 最大陽極損失試験値・・・15W とある。

左)川西マークと川西眞空管/C-202Aとプリントされている。見づらいがプレート上部中央(ちょうど川西マークの上部分に見える)にも川西マークが刻印されている。ラベルには、1本毎のロット番号と昭和18年12月製造とスタンプされている。

右)錨マークと十一號發振電球とプリントされている。

UX-超45と同様に、頭頂部の曲率が小さい(平べったい)のが気に入っている。

角形プレートにガラスビード。箱内には、1本毎に、試験票が入れられている。フィラメントはトリタンで煌々と輝く、将に電球。

 

別の球。構造やプリント・ラベルは全く同様。

トップからの眺めも同様。

底面からの眺め。底面には、川西のマークが浮き彫りされている。

 

後期の元箱。紙質も薄く普通になった。RCAと同様に上下から蓋をステープルで留めるタイプ。

上蓋。薄くなっているが、C-202Aとスタンプされている。

が、ひっくり返してみると、KX-80の箱を流用していることが解る。RCAでも民生箱を裏返して軍用箱として用いていたことがある。

中に入っていた試験票。”試験 19年7月7日”とある。

ラベルには、昭和19年6月製造とある。構造やプリント・ラベルは全く同様。

トップからの眺めも全く同様。

底面からの眺めも全く同様。

 

こちらも別の球。構造やプリント・ラベルは全く同様。

トップからの眺めも全く同様。

底面からの眺め。底面には、川西のマークの浮き彫りがない。

 

こちらも別の球。構造やプリントは全く同様。ラベルが残っていないので製造年月は不明。

トップからの眺めも全く同様。

底面には川西のマークがある。

 

この球は頭頂部の曲率が異なる様に思い並べて比べてみた。左が普通の球で右がこの球。やはり、右の方が頭頂部の曲率が大きい(丸い)。偶々なのか製造時期によるものかは不明。

 

 

以下は、トリタンのSTタイプを紹介します。

 

RCA 10

銀プリント黒ベークライトベース。黒化プレート。プレート上部にセラミックサポート。プレートは、ナス管の様にステムの根本に巻きつけたベルトからのピラーにより支持している。

トップマイカは円形。サイドマイカもある。

 

こちらも銀プリント黒ベークライトベース。黒化プレート。プレート支持構造も上と同様であるが、プレート上部のセラミックサポートが無くなっている。

トップマイカも上と同様に円形であるが、マグネシアが塗布され、フィラメントをコイルスプリングで吊っている。サイドマイカもある。

 

 

RCA VT-25

ガラス管壁に"10"、ベースは、マイカノールベースにRCAのマークと"VT-25"。灰色プレート。上下マイカサポート。セラミック不使用の初期型と思われる。

 

 

RCA 210T

送信用。ガラス管壁に"210T"、ベースは、タイトベース、RCAのラベル付き。黒化プレート。上下セラミックサポート。上部マイカサポート無し。内部構造はSylvania210Tと区別が付かない。

 

 

Hytron VT-25

ベースは、マイカノールベースに"VT-25"。黒化プレート。セラミックサポートは下部のみ。上部はマイカサポートのみ。フィラメント支持は、ステムから立ち上げたピラーに依る。半円状のグリッド放熱板。

 

 

GE VT-25

ガラス管壁に"10Y"、ベースは、マイカノールベースに"VT-25"。黒化プレート。上下セラミックサポート。ダブルゲッター。ゲッター台の上部にマイカ板を設け、ステムを保護している。

 

 

Sylvania 10

ガラス管壁に"10"、ベースは、タイトベース。黒化プレート。上下セラミックサポート。上部マイカサポート無し。

 

 

Sylvania 210T

送信用。ガラス管壁に"210T"、ベースは、タイトベース。黒化プレート。上下セラミックサポート。上部マイカサポート無し。内部構造は上の球と区別が付かない。

 

 

送信用。ガラス管壁に"210T"、ベースは、タイトベースで緑プリント、リーフマーク付き。黒化プレート。上下セラミックサポート。上部マイカサポート有り。

 

 

Sylvania 10Y

ガラス管壁に"10Y"、ベースは、マイカノールベースにリーフマーク。黒化プレート。上下セラミックサポート。ステムのサイドに金属板を立てている。

 

 

NL(National Electronics) VT-25A [Sylvania 10Y]

NL(National Electronics)はアメリカの商社でベースに自分の名前をリプリントしている。構造は上と瓜二つでSylvania製で間違いないと思われる。管壁に"10Y"と元々のプリントがされている。しかし、"VT-25A"のリプリントは頂けない。ちゃんと正しく"VT-25"とリプリントしてもらいたいものだが、商社レベルでは致し方ないか。

 

 こちらも上と同様だが、プレートが黒化プレートとなっている。下と全く同じ構造。

 

 

Sylvania VT-25

上と同様に、ガラス管壁に"10Y"、ベースは、マイカノールベースに"VT-25"。黒化プレート。上下セラミックサポート。これもステムのサイドに金属板を立てている。マイカ板タイプとどちらが古いかは不明。

 

上のGEと同様に、ガラス管壁に"10Y"、ベースは、マイカノールベースに"VT-25"。黒化プレート。上下セラミックサポート。ダブルゲッター。ゲッター台の上部にマイカ板を設け、ステムを保護している。上のGE VT-25と瓜二つでマークが消えると見分けが付きません。

 

 

サイモトロン UX-202A

元箱。"電力増幅及發振用三極管"とある。

初期型のST16タイプでちょっと背が高い。プレートも送信管仕様にステムで留めてあります。

トップには○にマツダのマーク。

 

 

マツダ UX-202A

昭和19年8月製。緑ガラス。戦時中の資源節約型で外形がST16からST14になっている。ガラスビード支持とマイカ支持を併用。いまだに使用可能なのは天晴れですが、こんな球を見ると悲しくなります。

 

 

 

以下は、オキサイドコーティングの210/10を紹介します。

 

de Forest 410

刻印ベース。プレートは大型の丸形。de Forestが初めてオキサイドコーティングフィラメントの210を出しました。

 

 

de Forest 510

送信用仕様。上部とプレートのサポートにセラミックを使用。プレートは大型の丸形。

 

 

Raytheon ER210

4ピラー構造となる前。丸プレートに太めのオキサイドコーティングフィラメント。ガラスビード支持。

 

 

Raytheon 10

巨大な輸送箱入り。

1933年製。

黒色ベークライト刻印ベース。上下に大型セラミックサポート。新型リブ付き黒化ボックスプレート。大型4ピラーステム。

上部からの眺め。

 

別の球。造りは全く同じ。

上部からの眺めも全く同様。

 

 

Sylvania SX-210

刻印ベース。私の好きなメッシュプレートタイプ。大型角形プレート。ガラスビード支持。Sylvaniaは、トリタンでもオキサイドコーティングでも両方のタイプで210/10を製造している。

 

 

刻印ベース。こちらは通常の大型角形プレート。ガラスビード支持。

 

 

unknown X-210

メッシュプレートタイプ。大型角形プレート。ガラスビード支持。

 

 

unknown X-210

見えづらいが、こちらもメッシュプレートタイプ。大型角形プレート。ガラスビード支持。

 

 

EUROPA 210

管壁には、トレードマークと管名が"210"とプリントされ、さらに、"7・5V 425V"ともプリントされている。他にもプリントされている様だが現物を再確認してからとしたい。内部には、ガラスの外形の割に、大型の角形プレートが収められ、中央部のガラスバーでグリッドやフィラメントを上下から全て支持している、いかにもヨーロッパ製という内部構造。足はUX。

WEVT-52の様なオキサイドコーテッド型の3本吊りフィラメント。

 

 

 

以下は、オキサイドコーティングのSTタイプを紹介する。

 

Raytheon 10

上のナス型のSTタイプ。刻印ベース。大型4ピラーステム。新型リブ付きプレート。

 

 

Silvertone 210

珍しいST19タイプ。50WE300A/Bと同じボリューム満点の外観。ラベルには、JUN 1935とスタンプされている。50のグリッドピッチだけを変更した様で、外見だけでは50と見分けが付きません。製造は、National Unionと思われる。

 

 

Wizard 10

こちらも珍しいST19タイプ。

 

 

 

他にも見つけ次第追加する。

 

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