MT-3S 送信用直熱3極管

 

 MT-3Sは、謎の多い眞空管だ浅野勇著「(正)魅惑の真空管アンプ」に一応規格が載っているが、情報はそれだけで、見たことも無い状況が続いていた。以前、「ラジオと音響」に浅野勇さんが製作記事を2度ほど発表したことを記憶しているが、規格は不明なままで、当時の雑誌内の画質の悪い小さな写真では姿もまともに拝めなかった。その後、昭和12年発行と思われる「送信用理研眞空管 一覧表」(理研眞空工業株式會社)のコピーを入手したが、MT-3MT-4は載っているものの、MT-3Sは、まだ開発されていなかったためか載っていなかった(MT-4Aも載っていない)。

 図らずも、実物が入手できたので、いろいろと確認することが出来た。実物を入手するまでは、MT-3のベースをUX4ピンから大型UV(UV-211A等と同じ。)に変更したものが、MT-3Sなのではと勝手に推測していたが、どうも規格も異なる様だ。外見的には、トップタイトサポートとサポートロッドとの固定部の構造(リング状にして固定している)等MT-3よりもむしろMT-4の方が近い印象だった。肝心の特性は、Ep300VとEp350Vで軽くテストした限りでは、バラツキはあるものの、MT-3MT-4とも大きく異なる結果となり、「魅惑の真空管アンプ」に載っている規格が正しそうという印象だった(Ep450Vでテストする勇気はない。)。そもそも、「送信用理研眞空管 一覧表」では、MT-3MT-4とは、両者の特性表も載っているものの、増幅率と内部抵抗と相互コンダクタンスが全て一致しており、製造元の本家本元が作成したにしては、どこまで信用できるのか疑問な点も残る。

 それはともかくとして、「魅惑の真空管アンプ」の規格では、フィラメント電流が「2.75(A)」と記載されており、より大型管であるMT-4Aの「2.5(A)」よりも大きくなっている点が疑問だった。「送信用理研眞空管 一覧表」の方では、MT-3MT-4は、ともに「2.5(A)」となっているし、それでなくともフィラメント材料は共通化するのが自然であることから、「魅惑の真空管アンプ」に載っている規格の「2.75(A)」は「2.5(A)」の誤植と考えた(同ページの規格表では、WE205Dのフィラメント電圧も「4.5(V)」を「5.0(V)」)と誤植している。)。そこで、実際に実物を測定してみたところ、アナログテスターで「2.4A弱」、デジタルテスターで「2.38A」となったことから、やはり推測どおり、2.5(A)」が正しいことが裏付けられた。正しい規格表を下に掲げる

 特性的には、250/50よりはずっとドライブし易い球で、しいていえば、801/VT-62のパラに似ている(フィラメント電力も一致)。欧州系では丁度PX-25の様な球である。しかもトリタンフィラメント。国産の隠れた(?)銘球と思う。音も姿も(特性的にも)当方のお気に入りの内の1本。

type Ef/V If/A Ep/V Eg/V Ip/mA Gm/μmho μ Ri/Ω RL/Ω Po/W
250/50 7.5 1.25 400 -70 55 2100 3.8 1800 3670 3.4
      450 -84 55 2100 3.8 1800 4350 4.6
801/VT-62 7.5 1.25 425 -40 18 5000 8 1000 10200 1.6
      500 -45 24 4600 8 1725 8000 2.3
801/VT-62 パラ 7.5 2.5 425 -40 36 10000 8 500 5100 3.2
      500 -45 48 9200 8 863 4000 4.6
MT-3S 7.5 2.5 450 -37.5 60       3600 4
PX25 4 2 400 -34 62.5 7500 8.8 1265 3200 6

 

理研 MT-3S

管壁には、”理研眞空”と〇に理のマーク理研のマークがプリントされている。反対側には、大日本帝国海軍の錨マーク〇にト、その下には”昭和18年3月"とプリントされている。電極は、上下にセラミックサポートが設けられ、その間に、黒化した薄いプレートが設けられている。プレートの支持構造も250WE252Aや一部のUV-211Aなどと同様に、ステムにマイカを巻き付けた後に、プレートからの4本のピラーを溶接した金属バンドをビスとナットで固定している。プレートからの引き出し線は、真ん中の写真の様にステムの脇から通している。メタルベースは、845等と同じく大型UVベース。フィラメントはトリタンで煌々と輝く。

底部からの眺め。

上部からの眺め。トップのタイトサポートには、フィラメント吊り用の小径のコイルスプリングが見え、ピラーの固定構造も見える。

 

 

下の球の元箱。球は逆さまに収納されている。上蓋は無い。

こちらは別の球。といっても構造は全く同じ。管壁の大日本帝国海軍の錨マーク〇にトの位置が左右逆になっている。その下には”昭和18年9月"とプリントされている。ガラス部とメタルベース部との境界部分には、防湿コーティングが施されていた模様。

底部からの眺め。構造は全く同じ。

上部からの眺め。構造は全く同じ。

MT-3SUV-211Aとを並べてみた。MT-3Sのプレートの薄さが良く解る。

 

 

(2025/12/28)

 

 

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