UX-超45 電力増幅用直熱3極管(日本独自球)

 UX-超45は、245/45の改良型として我が国のドン(DON)で開発・発売されました。外囲器をST14からST162A3と同じ大きさ。規格表には外形寸法平均値:全長130mm 直径50mmとあります。)へと大きくし、新たに電極設計もし、フィラメントも245/45の2倍の4往復とし、Gmの増大と内部抵抗の低下を図り、出力を245/45の1.6Wから3.0Wへと一挙に倍増させています。我が国が世界に誇れる銘球と思います。

型 名 Ef/V If/A Ep/V Eg/V Ip/mA Gm/μS μ Rk/Ω Ri/Ω RL/Ω Pp/W Po/W
245/45 2.5 1.5 250 -50 34 2000 3.5 1500 1750 3900 10 1.6
UX-超45 2.5 1.8 250 -45 35 3800 5.5 1300 1450 3500   3
2A3 2.5 2.5 250 -45 60 5250 4.2 750 800 2500 15 3.5

 初めは、昭和8(1933)年の夏前(春発売という記事があります。)にUX-超245としてSTタイプで発表されましたが、その後名前だけUX-超45となりました。極く初期のプロトタイプのUX-超245には、ナス型も存在した様ですが、私は見たこともありません。

 UX-超245/超45は、低周波増幅用の終段用電力増幅管であり、UX-45をさらにパワーアップさせたもので、ラジオや電蓄に用いられることを意図して開発されました。発表当時の広告にも、「ドン驚異球 超245=UX245×2デス 245時代の復活 本球壱個使用でシングルがダブルに優る 部分品の節約 一目瞭然 音質に於てペントード以上 プッシュプルの必要なし プッシュプルにすれば出力250voltで8watt以上」や「ドン 超-45は弊所に於て研究の結果完成されました2.5ヴォルト型多陰極の特許出願公告第三九九四號を有する三極管でありまして終段増幅用眞空管であります。その出力はシングルでUX-45に比し約2倍の3ワットであります。」と書かれていることからも裏付けられています。ここで挙げられている特許出願公告第三九九四號は、特許第109063号(昭和8年公告第3994号)のことで、昭和8年6月7日出願、昭和9年12月27日特許、特許権者(発明者)染谷孝(当時のドンの社長)となっています。

 なお、MJ無線と実験(1999年7月号)において、超45が超短波治療器用に開発されて、超短波の「超」を採って命名されたとの大塚氏の珍説は、以上のことからも明らかな誤りであることが解ります(MJ編集部では新説と言い張っていましたが、新説なら新説と明記すべきでしょう。)。「超」は45を超える(「スーパー」)という意味でしょう。

 UX-超45にも幾つかマイナーチェンジがある様ですが、大きな違いはベースの色で、茶色と黒色とがあります。見ていても見飽きることがなく、風格さえ感じられます。私の最も好きな球の1つで宝物です。

 

ドン UX-超45

DON UX-超45の勢揃い。左から右に新しくなる。茶ベースから黒ベースとなるに従って、扁平ドームヘッドが解消され普通の形状となると共に管長も長くなった。

左から1番目の球では、ベースの刻印がある側(フィラメントピン側)にゲッターが飛ばされているが、2番目の球以降は、逆側(裏側)となった。

そして、茶ベースと黒ベースとでは、良く見るとプレートのDONのエンボスのロゴやリブの間隔が異なることが解る。プレートのプレス型も新しくした模様。

4番目の球以降には、管壁の管名表示が白ペイントタイプとなり、程なくして銀ペイントタイプとなるが所持していない。最後期になるとゲッターがトップ部分に飛ばされたタイプもあるが所持していない。後期型となるにつれてますます物資の欠乏が目に見えて来て悲しくなる。

なお、左から1番目と3番目の球のベースの刻印が白いのは、以前の所有者が写真用にペイントを流し込んだためで、元々は左から2番目の様に刻印しただけの状態がオリジナルである。

以下、古い順に紹介する。

 

(左から1番目の球)

元箱。「超 低周波増幅」「SUPER AUDIO AMPLIFIER」と印刷されており、これからも上のMJ説(大塚説)は誤りであることが解る。

茶ベースの旧型の中でも、UX-超245からUX-超45となった最初期型と思われる。管壁にはロットを示す紙が貼られていた跡がある。ベースの"DON UX超45"の刻印とプレートの"DON"のエンボスが美しい。ゲッターは刻印の正面側(フィラメントピン側)に飛ばされている。

川西C-202Aと同様に、ドームヘッドの曲率が小さい(扁平)のが、独特のムードを醸し出している。

爪付き十字マイカに白プリントのトップマーク。初め、このトップマークの意味が解らなかったが、良く見れば、中心部から順に「D」「O」「N」を組み合わせたデザインであることが解った。UX-超45のトレードマークである4本吊りフィラメントが素晴らしい。

 

(左から2番目の球)

茶ベースの後期型。刻印ベースは変わらないが、茶色の色がほんの少し黒っぽくなって焦げ茶っぽくなる。そして、この球もドームヘッドの曲率が小さい(扁平)。ゲッターは刻印の正面(フィラメントピン側)とは逆側に飛ばされている。

爪付き十字マイカはそのままだが、トップマイカとプレート支柱との固定方法が変わったことに加えて、プレート支柱の先にドーム部のガラスに固定するためのワイヤーが追加された。トップマークも赤字(小豆色)で周りに"・DON RADIO TUBE"と表記され、中心部にロットがプリントされているタイプに変わった。このタイプのUX-超45が最も好きだ。

UX-超45の最も特徴的なフィラメント構造の基になる固定部分のアップ。

製造する際には、各々支柱を溶接した2つの金属バーを(所定フィラメント長の2倍の間隔に)上下に置き、その間にM字型にフィラメントを張って、その後、張ったフィラメントの中央部から全体を2つに折り曲げて、折り曲げた中央部の4点を頂部に吊って、上下の2つの金属バーを下側にして、各支柱をステムから引き出してフィラメント端子としている。

写真では、手前(上)側に初めにM字に張ったフィラメントのトップ側の金属バーが、奥(下)側に初めにM字に張ったフィラメントのボトム側の金属バーが見える。結果的に、4本吊りの8本フィラメントとなり、隣り合った2本ずつのフィラメントが1往復毎にパラレル接続されることになる。このフィラメント構造の製造方法が上で挙げた特許。同じドンUX-2A3も同じ構造で、6本吊りの12本フィラメントとなっている。なお、ドンUX-45は普通のフィラメント構造。

 

(左から3番目の球)

元箱。1番目の箱との違いは、赤味の色が朱色っぽくなり、紙厚も少し厚くなった。デザインは同じデザインを踏襲しているが、良く見ると、トップとボトムの印刷の字の向きが上下逆さまとなった。

黒べースの新型。中でも最初期型と思われる。刻印ベースにメッキ付きの足ピン。ベースの刻印が、DON TUBEとなった。管壁には、DONのラベルが貼られると共に、赤い字で八角形の中に管名とロットがプリントされている。フィラメント構造を含め管内の構造は基本的に茶ベースの球と同じ。外囲器はドームヘッドの曲率が通常型のものとなった。

トップマイカが爪付き円形タイプとなる。固定ワイヤーはなくなった。トップマークも無くなった。

 

(左から4番目の球)

元箱。3番目の箱と変わらない。日光で少し褪色している。

基本的には3番目と変わらないが、DONのラベルがピンク色となった。そして、その時その時のロットによっても変わる様だが、ベースの刻印がなくなり、足ピンも鉄製となった。

トップからの眺めは変わらない。

 

見て素晴らしい球は、出てくる音も期待を裏切らない。どっぷりと聴き惚れてしまう。

 

(2006/07/22)

(2016/11/27)

(2016/12/25)

 

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