CATKIN VALVES (英国独自球)

 

 キャトキン管(Catkin Valve)は、英国のM-O.V.(Marconi-Osram Valve Company Ltd.)によって開発されたユニークな真空管です。送信管で既に製造されていたC.A.T.(Cooled Anode Transmitting)管を受信管に適用した造りとなっています。それで、CATに”のようなもの”や”モドキ”という意味合いの"-kin"を付けて、"CATKIN"と命名されました。(花の名前由来説は誤りと思います。)

 1933年5月に登場した最初は、MH4(中μ傍熱3極管)、MS4B(検波・高周波増幅用傍熱4極管)、VMS4(バリアブルμ型高周波増幅用傍熱4極管)、MPT4(電力増幅用傍熱5極管)の4種類が登場して、1934年になって、7ピン(B7)足タイプで、VMP4/K(検波・高周波増幅用傍熱4極管)、W30(検波・高周波増幅用傍熱4極管)及びN30(電力増幅用傍熱5極管)の3種類が加わりました。ハウスキーパーシールや精巧なマイカ支持など新たな設計に加えて、製造コストが高かったことは明白で、数年間製造されただけで製造が中止された球ですが、ナス管時代にこの様な球が設計されたことに加えて、その後、米国でのメタル管の開発・製造へと結びつく、歴史上画期的な意義のある球と思います。

 キャトキン管の定義は、プレート(アノード)が外囲器を兼用している、すなわち、プレートの外側が外気となっていることで、ガラス管の外側をメタルケースで覆っているMG(メタルガラス)管とは異なるものであることは明白です。

 キャトキン管が全部で何種類製造されたのかは難しい問題です。電気的には、上の7種類と米国の5Z4オリジナルの都合8種類となるのかも知れませんが、MPT4には、5ピンタイプと7ピンタイプとが存在しますし、MH4MS4BVMS4には、シールド缶の無いものも存在しました。(MPT4N30にシールド缶が付いているものも有ったのでしょうか。それと、VMP4/KW30でもシールド缶の無いものも有ったのでしょうか。)マイナーチェンジは、色々と存在します。

 

Marconi MH4

Marconi箱。"CATKIN VALVE"とある。トップに"METALLISED"と印刷されている。価格13/6d.(13シリング6ペンス)。(20シリングで1ポンド。12ペンスで1シリング。)データシート付きの規格表入り。

中身は、中古の様。かろうじて赤いデカールの痕跡が残っており、Marconiと判る。シールド缶は、円筒で中部を断面八角型に形成している。真鍮製との文献もあるが、銅製の様に見える。表面にカドミウム(Cd)鍍金とのことだが、ほとんど剥げている。

トップべークは、周辺に8個の穴。

Osram MH4

こちらのサンプルは未使用に近い。管壁下部に、Osramの青いデカール(CATKINと明記してある)と管名(黒プリント)。ベース底部に厚紙のリングを嵌めて、シールド缶とシャーシとの接触を防いでいる。

Marconi MH4

こちらは、珍しいシールド缶の無いタイプ。

Osram MS4B

Osram箱。"CATKIN VALVE"とある。トップに"METALLISED"の印刷は無し。価格19/-(19シリング)。

このサンプルは、カドミウム鍍金が良く残っていると思われる。管壁下部に、デカールと管名(黒プリント)。

トップべークは、4穴。トップナットは、ギザギザ付きの黒色。

Marconi VMS4

Marconi箱。"CATKIN VALVE"とある。トップに"METALLISED"の印刷は無し。価格19/-(19シリング)。但し、赤スタンプで、"METALLISED"と"17/6"(17シリング6ペンス)と打たれている。後で値下げの証拠品と思われる。

管壁下部に、デカールと管名(黒プリント)。

トップべークは、4穴。トップナットは、ギザギザ付きの黒色。

unknown VMS4

こちらは、ブランドも管名も消えてしまっているが、珍しいシールド缶の無いタイプ。

Osram MPT4

5ピン(UF5)タイプ。側面から、スクリーングリッドの端子を出して、ナットを付けている。管名は側面に黒プリント。カドミウム鍍金している様に見える(未確認)。上部プレート部分は、黒色エナメル塗布している。漆との噂もあるが、違う様だ(未確認)。それでも触れると感電しそうで怖い。プレート部分下部に金属バンドを巻き付けて、そこからリード線を出して、下部の缶部分との間のゴムリングの間を通して、ベースピンに引き出している。その間隔が1mm程でそこでのショートも心配になる。上部のプレート円筒がその下部でテーパー状に広がっている部分がハウスキーパーシールになってガラスと溶接されている。

Osram MPT4

こちらは7ピン(B7)タイプ。ベース部分が大きくなった。側面に管名を刻印。カドミウム鍍金は無い様。

Marconi VMP4/K

元箱は、英国伝統の逆さ吊り収納型。地球にMarconiのマーク。

アルミニュウム製のテーパーの付いたシールド缶。Marconiの赤いデカールと缶に管名の刻印。ベース底部に厚紙のリングを嵌めて、シールド缶とシャーシとの接触を防いでいる。

トップベークは、4穴。トップナットは、銀色。内ねじがトップを貫通して切ってある。

Osram W30

Osram箱。"CATKIN VALVE"とある。トップに"METALLISED"と印刷されている。価格17/6(17シリング6ペンス)。

当然ながら、他の外形は上と同じ。

トップベークは、4穴。トップナットは銀色。内ねじが途中までで、トップは平ら。

 

N30は写真に撮り忘れました。撮り次第追加します。(外形的には、7ピンのMPT4と同じです。)

 

(2008/09/20)

 

 

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