FM2A05A 万能型(高周波増幅用)傍熱5極管(日本独自球)

FM2A05Aは、電気的な規格(と電極構造)はドイツのTelefunkenNF2を元にして、アルミニウム製のシールドケースのデザインは(多分)ドイツのRV12P4000RV2P800を元にして、航空用軍用無線機用の万能球として、昭和14(1939)年にTelefunkenと技術提携していた我が国の日本無線により開発されました。昭和15(1940)年の秋には試作中の航空機用無線機の大半に使用されましたが、ドイツらしい余りにも精密で凝った設計・構造のため(特にボタンステムの採用もあり)、その後、需要が増えて、日本無線だけでは製造が間に合わなくなり、帝国海軍の要求により川西機械製作所松下電器産業でも製造される様になりましたが、日本無線製に比べるとやや性能的に見劣りがしたことも相俟って、当時の我が国の生産技術を以てしては必要量に応じた大量生産に対応することが困難となり、当時の帝国海軍が東芝にもこの球の製造を要求したところ、東芝の西堀栄三郎氏は製造上の困難さからその要求を断り、その代替球として、東芝においてRH-2を原型にしたソラが開発されることとなりました。

この辺の経緯及び外観と内部構造のイラストやご自身が実際に分解した電極内部の構造については、有坂英雄さんの「眞空管談義(正)」(2000年12月27日、郁朋社発行、非売品)の「FM2A05Aへのレクイエム」(p.39〜42)に詳しいですが、この文章からは、父君(有坂磐雄技術中佐、当時海軍航空廠兵器部員、後に大佐)への尊敬と追慕の思いが伝わってきます。

FM2A05Aは、(恐らくこれもドイツを参考にしてと思われますが)名は体を表す様にと考案された新しい命名方式に基づいて命名されており、その意味は、Fは航空機用、Mはオクタルベース、2はヒーター電圧12V(基本6Vの2倍)、Aは万能管、05は5極管1組、Aは出現順位を現します。そのデザインからして洗練されていて、私の好きな球の1つです。本来は、グリッドキャップ部分を覆うトップ部分のアルミ製シールドケースが付属しているが、当方は見たことがない。

それにしても、真空管の新しい命名方式による命名は、FM2A05Aに限らず、その後のソラも含めて(ほとんど)一代限りで使われなくなるのは、(ドイツとは大違いで)いかにも日本らしいと感心してしまいます。

 

不明(日本無線?) FM2A05A

製造メーカーの印がない。ということは逆に初期の日本無線製かも知れない。アルミのシールドケースの留めネジの頭が丸い。当時は、このアルミケースを回収して再利用したそうだが、一体どれだけ実際に回収されたのだろう。

トップからの眺め。グリッドキャップの絶縁のためトップにはステアタイトの板が嵌めてある。オクタルソケットのガイドピンの位置を示す黒い印が設けられている。

 

日本無線 FM2A05A

「日 ム」と赤スタンプがある。反対側には「B」の跡もある。足ピンは真鍮ピン。

トップからの眺め。ステアタイトに替えて黒ベークライトとなり、印は白色となった。

以上より、日本無線製の後期型と思われる。

 

松下 FM2A05A

足ピンは真鍮ピン。

トップからの眺めはステアタイトで同様。

アルミケース下側に、「20.1」と錨マークと「松下」のスタンプが印されている。秋葉原の某店から大枚叩いて購入したが、ヒーターはOKだが電流が流れない。アルミケースを外したら、残念なことに肩部分にクラックが入っていて、エアーチューブとなっていた。お陰で内部構造を良く見ることができる。

 

こちらは、別の球。

管壁に「松下」と錨マークと「昭20.5.」と「B」などとスタンプされている。昭和20年5月製。アルミケースの下端が切られている様で、回収したアルミケースを再使用したのだろうか。

トップからの眺めはステアタイトで同様。

 

川西 FM2A05A

こちらは、アルミケースがない状態の球。管壁にラベルが貼られていて、昭和18年11月(?)製造とも読める。

トップからの眺め。内部構造が少し見える。

 

 

他にもありますが、未整理の状態ですので、随時追加します。

 

 

(2006/11/25)

(2018/02/25)

 

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