6W-C5系 周波数変換用傍熱7極管

 

6W-C5は、戦後のスーパーラジオの周波数変換管(ペンタグリッドコンバーター)として、昭和23(1948)年に東京電気(マツダ)が米国の6SA7/6SA7GTを元に国産化した球です。しかし、生産設備等の事情により外囲器をST12型としベースをUt(小型UT)の7ピンとし、当時商用電源(AC100V)の電圧供給が不安定だったことからヒーター電流をオリジナルである6SA7/6SA7GTの0.3Aから0.35Aに増強しました。こんな処にも当時の技術者の苦労と日米の技術力の差が垣間見られます(そもそも米国では電源電圧の低下を考慮する必要はありませんが・・・)。それでも電源電圧が降下した時にはしばしば発振停止が起きた様で、その後6W-C5専用に6.3Vではなく7Vのヒーター巻き線を備えた大手メーカー製のラジオセットまで現れました。

戦後のスーパーブームに乗って、ヒーター電圧を2.5Vとした3W-C5や12Vとした12W-C5も製造され、戦前のラヂオや局型ラジオのアマチュアによるスーパーへの改造用、あるいはST管トランスレス5球スーパー用に供給されました。いずれにしても、ST管時代の5(6)球スーパーラジオの周波数変換管の定番として、mT管時代の6BE6に引き継がれるまで、広く使われ続けました。

特に集めている訳ではありませんが自然と集まってしまいます。今回改めて各社の球の写真を撮って気が付いたのですが、各社それぞれに(特にトップマイカの形状に)個性が出ていて面白いです。例えプリントが消えていてもこれらの違いからメーカーが特定できる様に思われます。

 

 

マツダ 6W-C5

灰色っぽいカーボンスート。管壁に○にマツダと八角形内に管名。一級マークもある。ガラスは緑色。光沢のない梨地のリブ付きプレート。初期型と思われる。

トップマイカのヒーターと第3グリッドの支柱との間には絶縁用のスリットが設けられている。トップマイカとプレート支柱との固定には鳩目が用いられている。

 

別の球。こちらはなで肩タイプ。管壁に〇にマツダと管名。やや梨地プレート。アクアダック塗布となった。

トップマイカがマグネシア塗布となった。第3グリッドの支柱との間に絶縁用スリットあり。プレート支柱との固定に鳩目があるが逆に下から嵌めてトップマイカの上部で固定している。

 

別の球。こちらもなで肩タイプ。艶消しプレート。

トップマイカはマグネシア塗布。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットあり。プレート支柱の鳩目がなくなり、短くなったプレート支柱にプレート材を巻きつけた状態でトップマイカの孔に挿入することに加えて、プレート材の上端部4ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの三角孔にそれぞれ挿入して、4つの爪を外側に曲げて固定している。

 

別の球。こちらもなで肩タイプ。艶消しプレート。

トップマイカのマグネシア塗布あり。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットあり。プレート材の固定方法は上の球と同じ。第1グリッド支柱が銅製となった。

 

別の球。こちらもなで肩タイプ。艶消しプレート。

トップマイカのマグネシア塗布がなくなる。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットあり。プレート支柱の固定方法は同様だが、プレート材の上端部4ヶ所を爪状(先が尖った三角形状になった)に伸ばしてトップマイカのスリットに各々挿入して、4つの爪を内側に曲げて固定している。第1グリッド支柱は銅製。

 

東芝 6W-C5

ベースにToshiba(東芝)の銀プリントとなった。光沢プレート。プレートのリブの形も変わった。トップマイカの硝子と嵌合する部分の折り曲げ長さが若干長くなった。

トップマイカの形も大幅に変わった。トップマイカのマグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。プレート支柱が無くなり、プレート材の上端部2ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの半円孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。第1グリッド支柱は銅製。なで肩外囲器を別にすると下のエレバム製とそっくり同じ構造なので、エレバムのOEMと思われる。流石の東芝もこの頃にはST管の製造設備を維持するのは困難だったのだろう。

 

別の球。光沢プレート。

別の球だが、構造は全く同じ。

 

 

エレバム 6W-C5

ベースに黄色プリント。光沢プレート。

 

トップマイカのマグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。プレート支柱なし。プレートはプレート材の端部2ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの半円孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。第1グリッド支柱は銅製。

 

別の球。光沢プレート。

構造は全く同じ。

 

こちらも別の球。光沢プレート。

こちらも構造は全く同じ。

 

 

ドン 6W-C5

管壁に白プリント。艶消しプレート。

トップマイカのマグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。プレート支柱あり。プレートは上から鳩目だけで固定。第1グリッド支柱は銅製。

 

 

松下 6W-C5

ベースに銀プリント。管名の左側に〇にナショナルのマークがある。光沢プレート。

トップマイカには少しマグネシア塗布あり。トップマイカの両端部は、中央部がやや膨らんでおり、上下端に尖った爪が2つずつ設けられており、ガラス壁に内側から押し付け固定するようになっている。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。プレート支柱なし。プレートはプレート材の端部2ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの半円孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。

 

別の球。ベースに銀プリント。光沢プレート。管名の左側に〇にビクターニッパーマーク付き。〇にナショナルのマークは管名の右側にある。製造ロットは、RE(1954年5月製と推定)。松下電器(株)は昭和29(1954)年2月に日本ビクター(株)と資本提携しているので、その直後の製品となる。

トップマイカなどの構造は全く同じ。

 

別の球。ベースに銀プリント。管名の左側に〇にナショナルのマークがある。光沢プレート。製造ロットは、OL(1957年12月製と推定)。

トップマイカなどの構造は全く同じ。2本の第3グリッド支柱を結ぶ線と他のグリッド支柱を結ぶ線との角度は直角ではなく斜めになっている、すなわち、第3グリッド支柱のマイカ孔の位置が左右にずれて開けられているのが解る。

 

別の球。ベースに銀プリント。光沢プレート。

トップマイカなどの構造は全く同じ。

 

 

日立 6W-C5

管壁に金プリント。艶消しプレート。

トップマイカはマグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端には、中央部にV字型の切れ込みを設けている。プレート支柱はマイカ押さえ用金属片を溶接して固定している。

 

別の球。ベースに白プリントとなった。カーボンスートが首のところまで設けられている。製造ロットは、311(1963年11月製か)。

ガラリと構造が変わった。トップマイカはマグネシア塗布となった。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端部は、歯車状のギザギザ(5個の凸部、というか4個の凸部を取り去ったような)形状となった。プレート支柱はなくなり、プレートはプレート材の端部2ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの三角孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。第1グリッド支柱は銅製で、U字状の放熱フィンが設けられている。

 

別の球だがロットも同じで構造は全く同じ。

トップの構造も全く同じ。

 

 

NEC 6W-C5

管壁に赤プリント。艶消しプレート。

トップマイカはやや幅広でマグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットあり。トップマイカの両端部は、ただの四角辺をガラス管壁に押し付けており上下端が変形している。プレート支柱はなく、プレートはプレート材の端部4ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばして、その内2個をトップマイカの三角孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げると共に、残りの2個の爪をトップマイカの脇から抱え込むようにして内側に曲げて固定している。見るからにお粗末な固定構造で、これで本当に大丈夫かと思ってしまう(もっとも松下など他社製では、2ヶ所の爪のみによる固定で、それに比べればさらに強固とはいえる。)。

 

別の球。管壁に赤プリントは同じ。光沢プレートになった。

トップの構造も変わった。トップマイカはさらに幅広となり、マグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットあり。トップマイカの両端部の構造は同じ。プレート支柱はなく、プレートはプレート材の端部4ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばして、その内2個ずつをトップマイカの両サイドに2個ずつ設けられた三角孔にそれぞれ挿入して、各爪を外側に曲げて固定している。第1グリッド支柱は銅製となった。

 

別の球。管壁に赤プリントは同じで、同じ構造。

トップの構造も全く同じ。

 

別の球。見えづらいが管壁に金プリントとなった。構造は同じ。

トップマイカの構造は全く同じだが、マグネシア塗布となった。

 

別の球。管壁に金プリントも構造も同じ。製造ロットは、832

 

別の球。管壁に白プリントとなった。構造は同じ。製造ロットは、833

トップマイカの構造もマグネシア塗布(より白っぽくなった)も全く同じ。トップマイカから出ている各グリッド支柱の高さが切り揃えられる様になった。

 

 

TEN 6W-C5

管壁に金プリント。光沢プレート。カーボンスートが首のところまで設けられている。製造ロットは、1C4P

トップマイカは少しマグネシア塗布。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端部は、上下と真ん中の3個の爪が設けられた形状となった。プレート支柱はなし。プレートはプレート材の端部2ヶ所を2段に爪状(先は平ら)に伸ばしてトップマイカの三角孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。第1グリッド支柱は銅製で、U字状の放熱フィンが設けられている。

 

別の球だが、同じ製造ロット1C4Pなので、全く同じ構造。

トップマイカの構造は全く同じ。

 

別の球。管壁に金プリント。光沢プレート。カーボンスートが首のところまで設けられている。製造ロットは、1A5

トップマイカはマグネシア塗布。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端部は、中央部のみ凸状となった形状となった。プレート支柱なし。プレートはプレート材の端部2ヶ所を爪状(先は少し丸まっている)に伸ばしてトップマイカのスリット孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。第1グリッド支柱は銅製で、U字状の放熱フィンはなくなった。

 

別の球。管壁に金プリント。光沢プレート。カーボンスートが首のところまで設けられている。製造ロットは、1A5K

トップマイカはマグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端部は、中央部のみ凸状となった形状。プレート支柱なし。プレートはプレート材の端部2ヶ所を爪状(先は少し丸まっている)に伸ばしてトップマイカのスリット孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。第1グリッド支柱は銅製。U字状の放熱フィンなし。

 

別の球。管壁に金プリント。光沢プレート。カーボンスートが首のところまで設けられている。製造ロットは、1J5

トップマイカはマグネシア塗布。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端部は、中央部のみ凸状となった形状。プレート支柱なし。プレートはプレート材の端部2ヶ所を爪状(先は少し丸まっている)に伸ばしてトップマイカのスリット孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定。第1グリッド支柱は銅製。U字状の放熱フィンなし。

 

 

双葉 6W-C5

ベースに銀プリント。光沢プレート。カーボンスートが首のところまで設けられている。

トップマイカはマグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端部は、上下と真ん中に3個の爪が設けられた形状となった。プレート支柱はなし。プレートはプレート材の端部2ヶ所を2段にやや長い爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの三角孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。第1グリッド支柱は、銅製で、U字状の放熱フィンが設けられている。

 

別の球。ベースに銀プリント。光沢プレート。カーボンスートは首まで。構造は同じ。

トップマイカの構造も全く同じ。

 

別の球。ベースに銀プリント。光沢プレート。カーボンスートがやや低くなった。

トップマイカの構造も全く同じだが、少しマグネシア塗布となった。

 

別の球。ベースに銀プリント。光沢プレート。カーボンスートがやや低いことも同じ。

トップマイカの構造も少しマグネシア塗布も全く同じ。

 

 

ホリゾン 6W-C5

ベースに銀プリント。やや光沢が劣る梨地プレート。

トップマイカはマグネシア塗布なしで、両端部は3個の山(三角)形状。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットあり。プレート支柱なし。プレートはプレート材の上端部2ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの半円孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げることだけで固定している。

 

 

ロダン 6W-C5

管壁に赤プリント。光沢プレート。トップマイカ上部に出ているグリッド支柱がいずれも長め。

トップマイカはマグネシア塗布なしで、両端部は3個の山(三角)形状。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットあり。プレート支柱なし。プレートはプレート材の上端部2ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの半円孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げることだけで固定している。

マイカの形だけみれば、上のホリゾンと瓜2つ。

 

別の球。

別の球だが、構造は全く同じ。

 

 

シグナル(山王電子) 6W-C5

ベースに銀プリント。光沢プレート。トップマイカ上部に出ているグリッド支柱がいずれも長め。

トップマイカはマグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端部は、幅広凸状片が設けられた形状。トップマイカとプレート支柱との固定には鳩目が用いられている。第1グリッド支柱は銅製でない。トップマイカのヒーターと第3グリッドの支柱との間には絶縁用のスリットが設けられている。

 

 

不明(マツダ) 6W-C5

やや梨地プレート。

トップマイカはマグネシア塗布なし。トップマイカのヒーターと第3グリッドの支柱との間に絶縁用のスリットあり。トップマイカとプレート支柱との固定には鳩目が用いられている。

この構造から推測すると、初期のマツダ製と思われる。

 

 

不明(マツダ) 6W-C5

なで肩。艶消しプレート。

トップマイカはマグネシア塗布。第3グリッドの支柱との間に絶縁用スリットあり。プレート支柱との固定に鳩目があるが逆に下から嵌めてトップマイカの上部で固定している。

この構造から推測すると、上のマツダ製と思われる。

 

 

不明(TVC) 6W-C5

なで肩。光沢プレート。

トップマイカはマグネシア塗布でない。第3グリッドの支柱との間に絶縁用スリットあり。プレート支柱との固定は鳩目使用。第1グリッド支柱は銅製で、小型の冷却フィンが設けられている。

この構造から推測すると、TVC製と思われる。

 

 

不明 6W-C5

光沢プレート。

トップマイカはマグネシア塗布。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端部は、上下と真ん中に3個の爪が設けられた形状。プレート支柱なし。プレートはプレート材の端部2ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの半丸孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。第1グリッド支柱は銅製ではなく、Ω状(坊主状・ダルマ状というか膨らんだU字状)の放熱フィンが設けられている。

 

 

不明 6W-C5

梨地プレート。

トップマイカはマグネシア塗布なし。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。トップマイカの両端には、中央部舌片が延びており、そこにV字型の切れ込みを設けている。プレート支柱なし。プレートはプレート材の上端部2ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの半円孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げることだけで固定している。第1グリッド支柱は銅製。

 

 

不明 6W-C5

梨地プレート。

上の球と全く同じ構造。

 

 

不明 6W-C5

やや梨地プレート。

トップマイカには少しマグネシア塗布あり。トップマイカの両端部は、中央部がやや膨らんでおり、上中下部分に尖った爪が3個ずつ設けられており、ガラス壁に内側から押し付け固定するようになっている。第3グリッドの支柱との間の絶縁用スリットなし。プレート支柱なし。プレートはプレート材の端部2ヶ所を爪状(先は丸い)に伸ばしてトップマイカの半円孔に挿入して、2つの爪を外側に曲げていることだけで固定している。2本の第3グリッド支柱を結ぶ線と他のグリッド支柱を結ぶ線との角度は直角ではなく斜めになっている、すなわち、第3グリッド支柱のマイカ孔の位置が左右にずれて開けられている。第1グリッド支柱は銅製。構造的には、松下製に近いが、トップマイカの両端の爪の形が異なり、プレートの質感も異なる。

 

 

不明 6W-C5

やや梨地プレート。

上の球と全く同じ構造。

 

 

 

マツダ 12W-C5

見えづらいが管壁に薄くプリントされている。やや梨地プレート。

トップマイカはマグネシア塗布でない。第3グリッドの支柱との間に絶縁用スリットあり。プレート支柱との固定に鳩目があるが逆に下から嵌めてトップマイカの上部で固定している。トップマイカの上で第2グリッドと第4グリッドとを金属線で接続している。

 

 

TVC 12W-C5

ベースに銀プリント。なで肩。光沢プレート。製造ロットはF

トップマイカはマグネシア塗布でない。第3グリッドの支柱との間に絶縁用スリットあり。プレート支柱との固定は鳩目使用。第1グリッド支柱は銅製で、小型の冷却フィンが設けられている。

 

 

 

(2016/04/24)

(2020/07/26)

(2020/08/30)

 

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