35Z5GT 半波整流用傍熱2極管

 

 35Z5GTは、プレート電圧110V程度でも働くトランスレレスラジオの整流管として開発されました。アメリカでは第二次大戦中から戦後にかけてのGT管時代に沢山用いられました。我が国では戦後になってGT管トランスレスラジオに用いられましたが、直ぐにmT管時代となってしまい、余り活躍する機会が無く終わってしまいました。mT管では35W4に相当し、受け継がれてゆきます。

 

マツダ 35Z5GT

管壁にマークと管名が銀文字でプリントされている。グレーのアルミクラッド鉄板と思われるプレート。

上部からの眺め。

ヒーター引き出し部のアップ。右側に中間タップが引き出され3番ピンに接続されている。

足ピンは4番と6番が欠けている6本。ヒーターは2番と7番。中間タップが3番で、2-3間約7.5V。

 

松下 35Z5GT/M

これが問題の球で、先輩のTさんに教わるまで解りませんでしたが、何とヒーター電圧が約27Vしかありません。

松下のGT管ラジオPS-54から抜き取って確認してみました。

ベース部にマークと管名が銀文字でプリントされている。ニッケルプレート。プレートがX型のデザインは、KX-80BKでも採用されている。

上部からの眺め。

ヒーター引き出し部のアップ。何と中間タップがない!

足ピンは4番と6番に加えて、1番と2番(!)も欠けていて、全部で4本しかない。ヒーターは3番と7番で、3-7間約27V。こんな特殊なベースまで作って、どれだけ節約できたのでしょうか。

結局、この球は、松下がGT管トランスレススーパー(PS-53PS-54)を国産で製造するに際して、窮余の一策として考え出された球と解りました。GT管トランスレス管のヒーター電圧を5本直列してAC100Vに合わせる為に、35Z5GTの中間タップに注目して、中間タップまでの3-7間のフィラメント電圧を27Vとして計算すると、ヒーター全て直列で99.8V(27.5Vとすると100.3V)となり丁度AC100Vと合う様になります。そこまでは良いのですが、それではと不要(?)になった2-3間のヒーターを取り去り、併せて不要(?)になった2番ピンまで省略するという、究極の省略管ということになります。

足ピンをケチるKX-12Fの伝統がGT管になっても立派に引き継がれているのは流石に松下だけのことはありますが、新たな管名を付ける努力までも省略してはいけないでしょう。ヒーターが35Vないのですから管名まで流用して35Z5GTを付けたのは頂けません。27G-K・・28G-K・・と命名すべきだったでしょう。

従って、この球は、PS-53PS-54専用の球で、この球を米国製のラジオなどに流用することはできませんので注意が必要です。

管名の最後のMは、最初「松下」のMかと思っていましたが、「モドキ」のMどころか「紛い物(まがいもの)」のMであることが判明しました。

 

(2015/10/25)

 

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