KX-12F系 半波整流用直熱2極管

 

KX-12Fは、昭和12年に、フィラメント電力はそのままに、KX-112B/12Bのパワーアップバージョン(180V30mA→300V40mA)として登場した。戦前から戦後にかけて、我が国のラジオの整流管としてポピュラーな球だった。高級ラジオにはKX-80が使われたが、普及品には、並三、並四、三ペンはもとより、戦後も6Z-P1相手に並三や高一、果ては5球スーパーにも用いられ、大活躍した。初期には通常の4本足だったが、ドイツのRGN354を真似て(と思われる)昭和15年頃から3本足となった。昔は、特に3本足がせこい感じがして嫌いだったが、今では、いかにも日本的な球として気に入っている。STラジオの整流管といえばやはりKX-12F。各社各時代のKX-12Fを比較してみるのも面白いものだが、個人的には、この"F"が何に由来するのか気になる。

5球スーパー、さらに酷いときにはUZ-42相手に使われたのでは、流石に電流値がオーバーしてしまうということで、パワーアップした傍熱型の改良型が登場した。12K12FK80HK80BKなど各社で呼び名が異なっていた。GT管になっても12KGT5G-K3となり、mT管時代にも、ポピュラーな5M-K9となって生き続けた。

 

マツダ KX-12F

刻印で4本足。"放"マーク付き。ガラスも緑になっていない。

トップにもサイドマイカ付き。昔の物は造りがしっかりしている。トップに○にマツダのマーク入り。

 

 

こちらは別の球。刻印で4本足。ガラスも緑になっていない。

トップにサイドマイカ付き。

 

 

こちらも別の球。刻印で4本足。

こちらも上と同様にトップにサイドマイカ付き。ガラスがやや緑っぽくなった。

 

 

こちらも刻印ベースで4本足。

トップのサイドマイカが無くなった。

 

 

こちらも刻印ベースで4本足。

トップ構造は同じ。

 

 

こちらも刻印ベースで4本足。ガラスが少し緑色になった。

トップ構造は同じ。トップに○にマツダのマークがある。

 

 

こちらも刻印ベースで4本足。ガラスが少し緑色になった。○にマツダのマークが管壁となる。"放"マーク付き。

トップ構造は同じ。

 

 

こちらも刻印ベースで4本足。ガラスの緑色が少し進んだ。あとは上の球と同じ。

トップ構造はサイドマイカが無くなってからずっと同じ。

 

 

元箱。○に放マーク付き。

赤刻印ベースとなった。4本足で検ラベル付き。

トップからの眺めは全く同じ。

 

 

赤刻印ベースで4本足。〇に放マークもある。

トップからの眺めは全く同じ。トップに○にマツダのマークがある。

 

 

赤刻印ベースのまま3本足となった。プレートに小孔が開いている。

トップからの眺めは全く同じ。

 

 

3本足で、赤刻印でなくなった刻印ベースタイプとなった。プレートに小孔。少し緑色ガラス。

トップマイカなどの造りは全く同じ。

 

 

元箱。2つの面に異なったデザインで規格が印刷されている。

刻印ベースで3本足のまま、真鍮ピンとなった。管壁に○にマツダのマークと〇に放マークもある。プレートに小孔。

トップマイカなどの造りは全く同じ。

 

 

刻印ベースで真鍮の3本足。

トップマイカなどの造りは全く同じ。

 

 

刻印ベースで真鍮の3本足。プレートに小孔。

トップマイカなどの造りは全く同じ。

 

 

こちらも刻印ベースで真鍮の3本足。"放"マーク付き。緑色ガラス。管壁に○にマツダのマーク。プレートに小孔。

トップマイカなどの造りは全く同じ。

 

 

マツダ KX12F

刻印でなくなった。戦中版と推定。金プリントで八角形の中に"KX12F"と○にマツダのマーク。一級マークもある。足は3本で真鍮製。ガラスは緑色。

トップマイカなどの造りは全く同じ。

 

 

マツダ KX-12F

元箱25本入りのカートン箱。

元箱。定価表記は無い。

こちらは戦後タイプ。銀色で○にマツダのマークと八角形の中に管名。ガラスがなで肩になり、プレート支柱も途中までで3ヶ所カシメてある。

トップからの眺め。トップマイカの形が変わった。トップに”タノ”と白でプリントされている。

 

 

マツダ 12F

元箱。名称に"KX-"が無くなり、"12F"となった。定価240円とある。下の80HKは定価270円でそれより30円安い。

こちらは戦後大分経ってからの保守用の球。構造は上の球と全く同様。

トップからの眺めも全く同様。

 

 

マツダ 12F

上の球と全く同じ構造。

トップからの眺めも上の球と全く同じ。

 

 

ドン KX-12F

元箱

刻印ベース。管壁に管名がプリントされている。

トップからの眺め。放マーク付き。

 

 

エレバム KX12F

戦前版。管壁に白プリントで○の中に"エレバム"のマークと八角枠内に"KX12F"。珍しいことに朱色の二級マークもある。(それでも、測定してみたら、全く問題なしだった。二級って一体?)足は真鍮の4本。白っぽいニッケルプレート。ゲッターもたっぷり飛ばされている。

トップからの眺め。

3つのマーク部分の拡大。

 

 

エレバム KX12F

戦後版。金プリントで八角形の中に"KX12F"と四角枠内に"ELEVAM"のマーク。一級マークもある。足は3本。

マイカなどの造りはマツダ製と同じ。

 

 

エレバム KX12F

金プリント。幅の狭い独特なプレート。○にエレバムのマーク。ロットは"G"。

トップマイカは台形型。フィラメントフックがマイカ板となった。

 

 

エレバム 12F

元箱。

ベース部に銀色でElevam ELECTRONIC CO. MADE IN JAPANと管名をプリント。フィンの大きいプレート。支柱がプレートの途中までしかない。上の戦後型なで肩マツダ製とそっくりだがガラスはなで肩とはなっていない。見えにくいが、ガラス部には、真ん中の写真に電電公社マークと共に36 12と、右の写真には、36 11と見える。したがって、エレバムで昭和36年11月に製造され、同年12月に電電公社に納入されたものであることが解る。初め、電電公社では昭和36年まで並三ラヂオを使っていたのかと思っていたが、先輩に測定器用だったのではと言われて納得した。

トップからの眺めもマツダ製と全く同じ様。逆にいうと、後期のマツダ12Fエレバムが製造していたと思われる。

 

 

トウ KX-12F

戦前版。刻印ベースではない4本足。管壁に〇にトウの商標と◇内に管名がプリントされている。反対側に〇に放マーク付き。ロットはQD。

トップからの眺め。トップマイカは十字型。

 

 

NEC KX-12F

赤で"Nippon Electric"とNECのマークと管名をプリント。フィンの大きいプレート。支柱がプレートの途中までしかない。カシメてはいない。

トップからの眺めもマツダ製と全く同じ様。

 

 

別の球。こちらは、管壁に菱形のNECのマークとその下に管名が白プリントされている。内部構造は上の球と全く同様。

上からの眺めも全く同様。

ベース底部。〇の中に"7"又は"ク"と赤ペイントでプリントされている。

 

 

松下 12F

元箱。

銀色で松下の社名とマークと管名をプリント。フィンの大きいプレートでカシメなしなのは上のNECと同様。支柱がプレートの途中までしかないのはマツダNECとも共通しており、戦後の標準仕様と思われる。

トップからの眺めもマツダ製と全く同じ様だが、トップマイカの爪は流石に松下だけあってケチっている。

 

 

Lifer 12F

マイナーな会社だが、○でデザインしたロゴマークと八角形中に"12F"とプリント。一級マークもあり。何といっても鼠色でざらついた様なリブ付きプレートが独特。ガラスの形状もちょっとおぼつかない感じ。

 

 

テレビ KX12F

これもマイナーな会社だが、ロゴマークと八角形中に"KX12F"とプリント。造りはマツダ製を踏襲している感じ。

 

 

ECONOMY? 12F

ガラス部は八角形中に"12F"と金プリント。"放"マークもある。ベースは4本足で鉄製で、"ECONOMY"の刻印がされているがオリジナルかどうか不明。(黒テープで補修してあるが、あり合わせのUXベースを代用したことも考えられる。)

 

 

不明 12F

八角形内に"12F"の金プリント。一級マーク付き。造りから言えば、上のNECの物とそっくりだが、マークが気になる。

 

 

不明 12F

こちらも製造メーカー不明だが、造りから言えば、マツダにそっくり。但し、カシメてはいない。

 

 

 

以下には、KX-12Fではないが、KX-12Fを改良して、大容量化した、傍熱型を併せて紹介する。

 

 

マツダ KX-12K

金プリント。一級マーク付き。カシメた黒化プレート。昭和24年頃発売され、その後、NECからKX-80BKが発売されると、早速対抗して下のKX-80HKとなった。

トップマイカ押さえの針金が見える。

 

 

JRC KX-12K

大きめの元箱。中はヨーロッパ風の包装。オリジナルどおりであるとすれば、球は逆さに収めるのが正しいと思う。

マークは、八角形の中にJRCと上下に分けてKX12Kとスタンプされている。一級マークもある。足は3本。昭和24年の製造と推定。

トップマイカのヒーター部分の両側にはスリットが設けられている。

 

 

マイカがマグネシア塗布型以外は上と全く同じ造り。

 

 

NEC 12FK

なで肩ガラス。アルミクラッドプレート。見えにくいが、ベースに黄色プリントでNECマークがプリントされている。ロット"12Y"。管壁には、八角形の中に"12FK"とその下に"C21"。カシメは3穴。

トップマイカのヒーター部分の両側にはスリットが設けられている。

 

 

松下 KX-12FK

銀プリントベース。フィン付きカシメ孔アルミクラッドプレート。支柱が途中で無くなっている。下のKX-80BKと管名プリント以外は全く同じ。

 

 

マツダ KX-80HK

銀色で○にマツダのマークと八角形の中に管名。ガラスがなで肩になり、プレートも黒化され幅広となった。この"H"は何に由来するものか不明。個人的には、半波の"H"か、Halfあるいは半分の"H"かと思われる。

トップマイカ押さえの八の字様の針金が見える。

 

 

マツダ KX-80HK

元箱。定価270円とある。上の12Fは定価240円でそれより30円高い。

なで肩ガラスと黒化プレート。上の球と同じ構造。

トップマイカの押さえ針金が無くなった。トップマイカのヒーター部分の両側にはスリットが設けられている。

 

 

NEC KX-80BK

見えにくいが、管壁に銀色で"KX-80BK"とプリントされている。黒っぽいリブ付きプレート。珍しいことに何と4本足。初期型だったのか、あるいは、3本足ベースがたまたま無かったので4本足ベースで間に合わせたのか、真相は不明。

 

見えにくいが、こちらは、管壁に赤で"Nippon Electric"とNECマークと"KX-80BK"とプリントされている。リブ付きプレート。3本足。

 

 

松下 KX-80BK

銀プリントベース。フィン付きカシメ孔アルミクラッドプレート。支柱が途中で無くなっている。ロットは"OR11"あるいは"ORH"。上のKX-12FKと管名プリント以外は全く同じ。

 

 

こちらも銀プリントで同じアルミクラッドプレートだが、放熱を考慮してX字型にクロスさせてカシメたプレートの形状がユニーク。技術提携していたPhilipsからの影響ではと推測。

銀プリント。リブ付き黒化プレート。上の球よりも後期型と推測。

 

 

他にもあるので、見つけ次第追加する。

 

 

(2010/04/25)

(2010/07/03)

(2011/07/24)

(2011/09/25)

(2015/04/26)

(2016/02/28)

(2016/10/30)

(2018/08/26)

(2020/09/27)

(2021/02/28)

(2024/01/28)

 

 

               規格表 ラヂオ球・ラジオ球 12ナンバー 総目録 真空管トップ トップ