2A7 周波数変換用傍熱7極管

 

 2A7は、グリッドを5つ持つ7極管で、ラジオの周波数変換用の専用管(ペンタグリッドコンバーター)として、1934(昭和9)年に米国で開発されました。それまで、スーパーヘテロダインの周波数変換は、5極管(ペントード)などで行っていましたが、発振用に別途真空管を用いることなく、1球で発振と混合を併せ持つ様にと、元々の5極管の第3グリッドの外側にさらにグリッドを設けて、これを第2グリッドと接続して、外側に第3グリッド(後述の新たな第2グリッドを数えると第4グリッド)と第4グリッド(後述の新たな第2グリッドを数えると第5グリッド)からなる4極管構造を構成し、一方、第1グリッドと第2グリッドとの間に発振プレート代わりに新たにグリッド(といっても支柱のみ)を設けて、第1グリッドと新たな第2グリッドとで3極管構造を構成する設計となっています。内部側の3極管を発振用に用い、外部側の4極管を周波数混合用に用いるという画期的な真空管でした。従って、トップには、第4グリッドが引き出されており、また、第3グリッドと第5グリッドとが管内で接続されています。足は新たに採用された小型の7ピン(UT型、我が国ではUt型)です。これの6.3V管が6A7となります。我が国では、同年内に国産化されましたが、最新鋭の球のため高価でまた製造上の困難さとバラツキのため動作が不安定な場合もありました。

 

 

Raytheon 2A7

刻印4ピラータイプ。

 

マツダ Ut-2A7

 「無線と実験」誌の昭和9(1934)年10月号pp.120〜121には、(東京)今西 一雄氏"2A7を用ひたAll wave Super-het."との記事があり、その中で、「・・・次ぎに問題の2A7です。こいつは、あんよが七本、何しろ買ったときは、夜もうつゝでした。この球の注意すべきことは、発振部のplate 即ち陽極 Gridは、僕の観に依りますれば、2本の nickel(?)の棒です。これが、もしも発振が停止したときには赤くなる事です。非常に注意を要します。又 Screen Grid の電圧が 100volts 以下ですと非常に感度が降り、陽極 Grid の過電の原因ともなります。・・・2A7ですが、この球の発振は止まない様にする事は非常に大切です。もし止みますと陽極 Grid は言ふにおよばず、 S.G. も赤くなり、吾人の心胆を寒むからしめます。・・・」と書かれています。

 なお、当時の価格ですが、「無線と実験」誌の昭和9(1934)年12月号の裏表紙には、ラヂオ受信用マツダ眞空管一覧表が載っており、それによると、高い順に、UX-250 14.00円 UX-2A3 10.00円 KX-281 9.50円 次が、UX-232 と並んで、Ut-2A7 7.00円 となっています。

刻印ベース。管壁には、○にマツダのマーク。

上部からの眺め。トップマイカには2孔が設けられており、サイドマイカ付き。プレート支柱は細長い金属小片で固定され、G4からターンせずにグリッドキャップに繋いでいる。そして、トップマイカの上部で、G3とG5とを繋いでいる。

 

こちらは別の球。刻印ベース。管壁には、○にマツダと"放"のマーク。グリッドキャップが真鍮製となった。

トップマイカはサイドマイカ付きでマグネシア塗布になった。他の構造は同様。

 

刻印ベースではなくなった。管壁に管名。反対側には、◎に一級マーク。括れ部の上部までカーボンスートされている。リブ無しのプレートが見える。

トップからの眺め。トップマイカはサイドマイカ付きのマグネシア塗布タイプで、G4からターンしてグリッドキャップに繋いでいるのに変更した以外は、同様の造り。

 

こちらは、戦後大分経ってなで肩となった球。〇にマツダの下に管名がプリントされている。プレートはリブ無しのままで、カーボンスートがアクアダックとなった。

トップからの眺め。サイドマイカがなくなり、トップマイカが短冊型となった。金属小片によるプレート支柱の固定は変わらないが、金属小片の形と押さえる方向が変わった。G4からターンしてグリッドキャップに繋いでいるのは同じ。そして、トップマイカの上部で、G3とG5とを繋いでいるのは同じ。ただし、Ut-6L7Gと異なり、G1の放熱板はない。

少なくとも、所持しているサンプルをみる限りでは、戦後大分経ってからのマツダのなで肩タイプにおいては、UZ-6C6UZ-6D6との識別ではないですが、グリッドキャップへの引き出し線がターンしているのがUt-2A7で、ターンしていないのがUt-6A7というふうに、ヒーターを点火せずとも両者を識別できるようにしていたのではと私には思われます。

 

 

(2009/03/28)

(2011/05/29)

(2020/05/24)

(2023/05/29)

 

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