12SQ7GT 検波増幅用傍熱2極3極複合管

 

 12SQ7GTは、プレート電圧110V程度でも働くトランスレレスラジオの検波及びそれに続く低周波増幅管として開発されました。アメリカでは第二次大戦中から戦後にかけてのGT管時代に沢山用いられました。我が国では戦後になってGT管トランスレスラジオに用いられましたが、直ぐにmT管時代となってしまい、余り活躍する機会が無く終わってしまいました。mT管では12AV6に相当し、受け継がれてゆきます。

 

マツダ 12SQ7GT

元箱。定価480円とある。

管壁にマークと管名が銀文字でプリントされている。グレーのアルミクラッド鉄板と思われるプレート。メタルシェルのベース。ガラスが曇っていて内部が見えにくくなっている。2極部は3極部の上部にヒーターを挟んで向かい合わせた状態で設けられている。この構造が12AV6にも引き継がれて行く。

上部からの眺め。上部マイカに2極管部を固定する爪も見える。

足ピンは8本全て設けられている。

 

松下 12SQ7GT/M

これが35Z5GT/Mと共に問題の球で、先輩のTさんに教わるまで解りませんでしたが、2極部が1個しかありません。

松下のGT管ラジオPS-54から抜き取って確認してみました。

ベース部にマークと管名が銀文字でプリントされている。ニッケルプレート。3極部の下に2極部が1つだけ設けられている。3極部も松下6Z-DH3Aで良く見られる片側だけをカシメて固定する構造で、私はこの構造をみると情けなくなってしまいます(貴重なニッケル資源の節約にはなったのでしょうが。)。ベースも当然にメタルシェルなど使用しない。ただのベークライトベース。

上部からの眺め。

足ピンは、1番と5番が欠けていて、全部で6本しかない。整流管の35Z5GT/Mのみならず、こんな球でも足ピンまでケチるのは松下の面目躍如で流石に天晴れです。

我が国ではST管時代から、スーパーの2極検波部は米国と異なりDAVC(遅延自動音量調節)を使うまでもなく、ただのAVCで間に合わせようとしたため、2極部が1つだけで間に合うという事情が存在していました。そこで、ST管時代にも、米国の75を基に2極部を1個のみにした6Z-DH3が登場し、それをシングルエンドにした6Z-DH3Aが広く国内で普及していました。

この球は、松下がGT管トランスレススーパー(PS-53PS-54)を国産で製造するに際して、以上の事情を受けて、丁度、6Z-DH3Aを12VのヒーターとしてGT化した様な球を開発したのだと思います。したがって、元々の12SQ7GTとは異なる球に対して、名前に/Mだけ付与して、手抜きをして、新たな管名を付ける努力までも省略してはいけないでしょう。ちゃんと6Z-DH3という新たな管名付与の先例があるのですから、12G-DH・・と新たに命名すべきだったでしょう。

従って、この球は、PS-53PS-54など用の球で、この球をDAVCを用いている米国製のラジオなどに流用することはできませんので注意が必要です。

管名の最後のMは、最初「松下」のMかと思っていましたが、「モドキ」のMどころか「紛い物(まがいもの)」のMであることが判明しました。

 

(2015/11/22)

 

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