球形オーディオン(Spherical Audion) 検波用直熱3極管

 

 球形オーディオン(Spherical Audion)は、一応、ドイツのリーベン管など先行する球はあった様ですが、一般的には、世界初の三極管として有名な球です。1906年に米国のLee de Forestが開発・発明し、米国特許も申請して特許を受けています。製造は、McCandless社が請け負い、当時製造していた自動車(フォードでしょうか)のヘッドライト用の電球を流用した、直径約5cm(1/8インチの16か1/2倍)のガラスバルブを用いて、その中に電極を封じ込みました。この球形の形は、後のWEVT-2205D等のテニスボール球にと引き継がれてゆきます。

 フィラメントは初め1本でしたが、寿命が35〜100時間と短いため、1908年にフィラメントを2系統封入したダブルフィラメント型となりました。プレートは初めは片側一枚のみ設けられたタイプ(単翼、片翼)でしたが、1909年になって両側に二枚設けられたタイプ(双翼、両翼)が生まれました。フィラメント材質としては、最初から1913,4年頃まではタンタルが用いられた様ですが、柔らかくて動作中に変形しやすいため、タングステンに変更されたが、エミッションが不足するため、タンタル線を2,3回フィラメントの頂部に巻き付けて改善を図った(Hudsonフィラメント)とのことです。

 やはり、ここにおいてグリッドが発明され、三極管が世に出たことが、その後の電子電気通信分野の発展にとり、歴史的にみて非常に意義深いものと感じています。

 なお、後の時代にレプリカとして製造された物がありますので本物との見極めに注意が必要です。解説はまた後で追加することとして、以下にサンプルを紹介します。

 

プレートが1枚の単翼(片翼)型でダブルフィラメント。フィラメントの片側は通常の電球の様にエジソンベースに引き出されていて、予備のフィラメント端子はベース部の根本にゴムで絶縁されている。プレートとグリッドの端子は上部のステムから各々リードで引き出されている。プレートもグリッドもいかにも手作りといった感じ。上下共にプラチナステム。フィラメントは1本が切れているものの、残りの1本はOK。

 

プレートが2枚の双翼(両翼)型でダブルフィラメント。フィラメントはやや後期のHudsonフィラメント。プレートもグリッドも上記と同様だが、製造も洗練されてきた様に思われる。リードにはオリジナルと思われるエンパイヤチューブが被せられている。こちらも上下共にプラチナステム。フィラメントも両方共OKで、恐らく製造から100年近く経過してなお未使用の状態にあると思われる。

 

(2012/01/29)

 

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