ナショナル PS-71

 仕 様  

ブランド ナショナル
メーカー 松下電器産業(株)
形 式 リムロック管 セミトランスレス 5球スーパー
寸 法 横幅(W)27(つまみ含めて29)cm×高さ(H)14cm×奥行き(D)18cm
重 量 2.8kg
使用真空管 UCH-42UF-41UBC-41UL-41UY-41
受信周波数 BCバンド535〜1605KC
中間周波数 455KC
感 度 300μV/m/50mW
電気的出力 無歪 1.1W 最大 1.6W
電 源 50〜60c/s 100V
消費電力 24VA
スピーカー ナショナル 5P-51R型 5吋 パーマネントダイナミックスピーカー
定 価 小売定価14,000円
発売時期 昭和28(1953)年
製造時期 昭和28(1953)年
備 考 小川卸商報 昭和28年10月に出ている。ラジオ工房HPより。

正面写真。リムロック管使用のラジオでデザインも気に入っている。ケースはベークライトでは無く木製。向かって右側面のつまみが同調。左側面のつまみがSW-音量。

背面。裏蓋も付いている。

これは初期型。後期型とはいくつか違いがあるが、ブロックケミコンがアルミケースであることと、真空管ソケットを留めているリベットがアルミ製であることが主に挙げられる。

内部は錆と埃はあるものの、比較的奇麗。上部に大きなフェライトバーアンテナが見える。当時、技術導入・提携していたオランダPhilips製の真空管が挿さっている。トランスレス用のヒーター電流0.1A(100mA)シリーズ。国内では、トランスレス用の球はヒーター電流0.15A(150mA)のmT管が普及してしまい、それ以上のヒーター電力の省電力化には向かうことがなかったため、リムロック管は国内では製造されることはなかった。私は、こういうマイナーな球が好きだ。補修用の真空管の供給に不安があったこともあると思われるが、その後に続くラジオは現れなかった。当時の最先端の球を輸入して国産のラジオに採用する心意気には天晴れである。AC100Vから単巻きコイルで昇圧した110Vによって、直列接続したヒーター用と共にB電圧用に供給し、併せてPL用巻き線を設けたトランスを使い、トランスの小型化を図っている。セミトランスレスと言って差し支えないと思う。

 

いよいよ今年(2023)の3月に修理を思い立ち、まずは欧米の球屋にリムロック管を一式注文した。円安で泣いたが、これが最後と思い一生分のスペア球をまとめて注文した。それが届いたところでやっと修理を開始した。

まずは、修理前の状態を確認した。

ケースを開けて、中のシャーシを取り出した状態。少々錆びついており、埃が積もっているものの、欠品は無い模様。

シャーシ内部の写真。2度修理の手が入っている様だ。最初の修理で一番上の黄色いコンデンサに交換され、2回目の修理で黒いコンデンサに交換されている。ボリウムもどの時点か不明だが交換されている。

ケース内部に貼付してあった回路図。実際の物とは組み立て時に調達できた部品との関係で少し異なる規格の部品も使われているが大きな問題ではない。なお、回路図には記入されていないが、パイロットランプには3Vが供給されている。

ここで、ヒーター電圧を計算してみると、UCH42が14V+UF41が12.6V+UBC41が14V+UL41が45V+UY41が31V=116.6Vとなるので、オートトランスで100Vを110Vに昇圧してやれば、110/116.6=94.3%の割合となり、十分にヒーター電力を供給できることになる。

改めて内部をチェックした結果、真空管は全てOKだったが、ブロックケミコンがダメだったので、ケースのみ再利用することにして、内部を取り出して、替わりに新しいケミコンを詰めた(22μF×5個)。そして大事な点は、オリジナル回路では、UY41の出口に60μFを使用しているが、規格上は50μFが最大なので、貴重なUY41を傷めないように、ここは44μF(22μF×2個)に換えて、平滑抵抗を出たところに66μF(22μF×3個)を入れた。出力電圧が2V程度低下するだけだし、ハムが増加した感じも無いので、これでOKとした。

また、ペーパーコンデンサ類は全て交換した。カップリングコンデンサには、一寸した遊び心もあって0.01μF1200V(!)というSpragueオレンジ・ドロップ 715Pを奢ってみた。UL41のカソード抵抗も抵抗値が変化していたのでセメント抵抗と交換したり、他の抵抗も交換したりした。

交換したコンデンサとオリジナルの豆球。頂部が扁平となっている。

それから、交換されていたボリウムの軸が長すぎた様で、先端から半分程ギザギザ部分を切断していたが、やはり軸は中間部分を切断して継いで欲しい。それでもまだ少し長かったので、今回は中間部分をさらに1cm程短くした上で継いだ。

修理後のシャーシ内部の写真。オレンジ色の大きなコンデンサがオレンジ・ドロップ。部品の交換だけで簡単に修理が完了する訳ではなく、詳細は省くが色々と1つずつ解決して行き、やっと半年掛かって修理が完了した。特に修理の手が入っている場合は注意が必要で、町のラジオ屋が修理したものでも、以外に間違った状態で修理されていたりして、それらの確認にも手間暇掛かるがそれが醍醐味でもある。

PS-71に使われていたオリジナルの球。左から、UCH42,UF41,UBC41,UL41,UY41UCH42はメッシュシールドとなる前の板シールドで、何とUL41初期型のメタルベースタイプ(!)

UCH42。左から、PS-71に使われていたオリジナルのPhilips Miniwatt, Telefunken 未開封元箱入りに入っていた未使用新品(板シールド)で上に写っているのがその元箱, Philips メッシュシールド 未使用新品。

UF41。左から、PS-71に使われていたオリジナルのPhilips Miniwatt, Mullard 未開封元箱入りに入っていた未使用新品と包装紙で上に写っているのがその元箱。

UBC41。左から、PS-71に使われていたオリジナルのPhilips Miniwatt, Mullard, Siemens 未開封元箱入りに入っていた未使用新品で上に写っているのがその元箱。

UL41。左から、PS-71に使われていたオリジナルのPhilips Miniwatt メタルベース, Mullard 後期型, Mullard 最後期型(下部の段差部分が曖昧となり、底面も含めてmTの様になった), Tungsram 最後期型(下部の段差部分が無くなり、底面も含めてmTの様になった)。

UL41の同じ並びを下部から眺める。リムロック管の特徴である「ポッチ」が見える。やはり見た目は古いものほど良い。

UY41。左から、PS-71に使われていたオリジナルのPhilips Miniwatt, Mullard, 36AM3B用アダプター, UY41代用ダイオード使用のアダプター。米国製の36AM3Bであれば入手に不安はないし、3-6間を用いれば丁度ヒーター電圧が32Vとなり、ヒーター電圧31VのUY41と全く同じに使える。修理途中や調整中に貴重なUY41をオシャカにしないためにも、これらのアダプターをまず作成してから、これらのアダプターを使って修理に取り掛かる位の心遣いは必要である。これらを使えば後顧の憂いなく修理に没頭できる。ただし、ベース部分が必要なため、新品のリムロック管を2本壊して流用する羽目になってしまった(泣)。

 

完成したラジオの裏蓋を付けた背面写真。電源コードや電源プラグはオリジナル。

完成したラジオの裏蓋無しの背面写真。球は、Mullard(イギリス), Siemens(ドイツ), Philips(オランダ)と欧州連合軍の布陣となった。新品未使用といっても、今から60〜70年前に製造されたものなので、大切に使って行きたいと考えている。

なお、真空管ソケットの上部正面には、球の区別のためか、ペンキで色が付けられている。左から、UY41は水色、UCH42は白色、UF41は黄色、UBC41は紺色、UL41は赤色と色分けされている。

裏蓋。

完成したラジオの正面写真。各パーツを分解してクリーニングしたが、ケースの再塗装はしていない。

完成したラジオのやや側面よりからの正面写真。側面の摘みが見える。

完成したラジオの正面写真で電源を入れた様子。バーアンテナ内臓なのでアンテナ線不要で各局を受信してガンガン快調に鳴っている。オレンジ・ドロップのカップリングコンデンサのお蔭か、はたまたリムロック管のお蔭か、音が良い様に感じるのは手前味噌だろうか。

 

 

(2015/08/30)

(2015/09/27)

(2023/08/25)

(2023/12/31)

 

                          国産ラジオトップ ラジオトップ