551/235/35/51 高周波増幅用傍熱4極管

 551あるいは235は、ラジオ用の高周波増幅管として開発されました。224/24のバリμ管となります。高周波増幅にはバリμ管の方が有利ですが、バリμ特性とするための構造(方式)が幾つか考えられました。コントロールグリッドのピッチを不均一とする方式で登場したのが、551で、RCAは、その特許の影響で、全く異なる構造の球を開発しました。それが235です。同じ様な特性を持った球が、異なる名称で存在するのはユーザーにとって迷惑な話で、その後、特許の問題も解決したのか、235551と同じ構造で製造されることとなりました。後に35/51とダブルネームとなり、ST14型に移行します。

 UY-235は、我が国でもマツダなどがRCAを踏襲して製造しましたが、当時の我が国では高周波増幅付きのラヂオは高級機でした。

 

と書いていましたが、「無線と実験」に下記の記事を見つけましたので、それに基づき以下に訂正します。

記事からところどころ(旧漢字や誤記を直しつつ)抜粋すると、

「自働感度調節真空管とは、ヴェリアブル・ミュー・チューブ(可変増幅率真空管)というものへ自分で勝手に意釈的の名称を付したものにすぎない・・・

 此の新真空管は、米国ボストン・リサーチ・コーポレイションのバランタイン氏とスノウ氏の研究発明に係わり、224型に属する遮蔽グリッド4極眞空管に改造を加え、極めて興味ある特徴を具備したものである。・・・以下特性の概要を紹介するがこれはQSTの5月号及び其他の雑誌から資料を得たものである・・・

 ヴェリアブル・ミュー真空管の特性は、特殊な構造を持つために、・・・種々の構造をのものを作ることが出来る。明瞭な写真を得ることが出来ないので掲載はしないが、スクリーングリッド型で内部スクリーン・グリッドは逆載頭コーン型をなし、プレートと外部スクリーンは通常の形となっている。制御グリッド線の間隔は、距離の短い位置では更に細かい構造を持ち、中央部で荒目となっている。

 この型に属する真空管として551及び235が試作された。双方とも傍熱型のもので、無線周波増幅用に設計されている。551型は、在来のUY224と殆ど等しい特性を持っているが、ただ通常動作プレート電流が僅かに高い(224が4mAなのに対して、551は5.3mAとなっている)ことと、制御グリッドバイアスの範囲が224の約2倍である。従って、在来の224の使用を指定している場所へ、551を使うには、バイアスに関して多少の変更を要する。其の方法としては、良く知られている通りポテンシォ・メーターを使うか、カソード抵抗法に依ればよい。

 第2の型は235で、これは一般に放送受信機の224の位置へ交換使用は出来ない。プレート電流は224の約2倍で、内部抵抗が約2分の1となっている。プレート抵抗の低いことは、224で得られる1段毎の増幅度に比して遙かに其の効果は大きいが、振動の発生を防止するには遮蔽を完全に行わなければならない。管の最大音量制御範囲は、有効グリッド・バイアス電圧が75ヴォルトの付近のとき最も広い。併し、45ヴォルトの場合でも充分な音量制御を行うことが出来、カソード抵抗法を用ふることが出来る。・・・(以下、大幅に省略。)」

 併せて、551235の規格表が載っていますので、比較用に224のデータと一緒に載せて対比すると以下のとおりです。

管名 Eh/V Ih/A Ep/V Ip/mA Esg/V Isg/mA Eg/V Gm/μΩ Ri/kΩ
224 2.5 1.75 180 4 90 1.7 -3.0 1000 400
551 2.5 1.75 180 5.3 90 Ipの1/3 -3.0 1050 400
235 2.5 1.75 180 9.0 75 Ipの1/3以下 -3.0 1100 200

という訳で、(少なくとも試作段階あるいは発表時ないし初期製造型までの時点では、)551235とでは、特性が異なった球でした。お詫びして訂正いたします。

いずれにしても、QSTの上記基文献にもあたっていないし、そもそも551のオリジナルデータがないことが問題ですので、今後探してみることにします。

(参考文献) 「無線と実験」 昭和6(1931)年7月号 pp.444〜450 高瀬 芳卿(逓信省工務局)「自働感度調節眞空管に就いて」

 

 また、昭和7(1932)年5月号の「無線と実験」には、山本満男氏(エレバム宮田製作所)の”バリアブル・ミウ四極管 UY235に就いて”との詳細な記事(pp.172〜176)があり、「・・・今席は一バルブ、メーカーとして観た所のバリアブル、ミウ四極管UY-235の使用法に就て簡単に御話し申上げてみたいと存じます。・・・之は要するに現在盛んに用いられている四極管UY-224の一種の奇形であると御考へになれば、何も難かしく御考へにならなくとも宜敷しい事かと存じます。・・・然らば、バリアブル・ミウ四極管は何時から市場に出たかと申しますと、欧米では昨年当初から各市場に提供されて居った様でありまして、我国では昨年の暮、弊所が一逸早く之を市場に送っております。一口にバリアブル、ミウ四極管と申しましても、各国のサンプルを集めますと、相当な数に上り交流用、直流用、又同じ交流用でも、静電特性の如何によって色々に区別する事が出来るのであります。 我国では目下同じバリアブル、ミウ四極管UY-235と申しましても、特性、形態共に多少異なった二種が御座います。其の一は外観は殆んどUY-224と異なった所が御座いませんで、一番内部のコントロール、グリッドだけにバリアブル、ミウの性質を持たせてある様で御座います。弊所のはコントロール、グリッドの外にスクリーン、グリッドの構造も特殊な型が用いられ、プレートもネットになっておりまして、包蔵瓦斯の駆除を容易ならしめてあります。規格の点に置きましては両者共大体同一でありますが、前者はプレート電圧を250ヴォルト迄昇げ得る様に出来ておりまして、電圧増幅率は相当高く内部抵抗も大であります。弊所のはプレート電圧はUY-224の場合で働かした時が一番よく働く様に設計せられておりますので、電圧増幅率は幾分低く目になっております。此処で両者の大体論を申上げますと電圧増幅率を高く採ります事は眞空管其の物としては感度が優れて参りませうが特性の傾度が増大致します関係上、やゝもすれば振動を発生し易く、従来のUY-224と大して異った所が無い様になります。 然かも増幅常数の大きいと云ふ事は内部静電容量の大きいと云ふ事を理由付けるものでありますから一層此の憂ひが有るわけであります。之に反し電圧増幅率を低めに設計したものに於きましては、眞空管自身としては感度が幾分落目でありますが、特性曲線のスロープの緩やかさは不必要な自動発振の防止に役立ちまして、入力側並びに出力側の静電容量も可成り少くなくなる理由でありますから、斯様な危惧は一層減少し得らるゝ理けであります。でありますから、実際セットで動作された上、何れが宜敷しいかと云ふ事は簡単に申上る事が難しいのであります。・・・」とあります。

 これによれば、エレバムが我国で真っ先にUY-235を市場に投入したことになっています。そして、恐らくサイモトロン(マツダ)を引き合いに出して、エレバム製とは、UY-235の構造や特性が異なることを説明しています。

 この後(掲載号は失念、後で追加します。)、「無線と実験」に、エレバム製のUY-235の内部構造(分解写真、というか製造工程の使用パーツ一覧写真)が載っていたのを記憶しており、それによれば、RCAの初期型(下の写真参照)同様に、スクリーングリッドを逆テーパー状(すなわち、すり鉢状)に形成してある(併せてコントロールグリッドのピッチも変更している?)ことを記憶している。そうであれば、上の記事中のスクリーングリッドと共にコントロールグリッドの構造も特殊だという内容と一致する。しかしながら、サイモトロン(マツダ)は、RCAと正規にライセンス契約しているのであるから、RCAと全く同じ構造で製造しているはずである。そうだとすると、両者は同じ構造となってしまい、上の記事の内容と矛盾することになる。あるいは、サイモトロン(マツダ)では早々に新型構造のUY-235に切り替えて製造して、エレバムでは依然として旧型構造のUY-235を製造し続けたということだろうか。いずれにしても、(初期型の)エレバム製のUY-235サイモトロン(マツダ)製のUY-235とが手元にないので比較することができないのが残念です。

 

Raytheon ER551

旧型のスクリーンシールド構造。当然ながら、ER224と外見上は区別が付かない。

こちらは新型のスクリーンシールド構造。

 

Arcturus 551

ブルータイプ。

 

RCA 235

ガラスビード支持。グリッドキャップへの引き出し線はターンしている。

こちらは珍しい初期型。見えづらいが、グリッドピッチは一定で、スクリーングリッドを逆テーパー状(すなわち、すり鉢状)に形成してある。(修正後の上の記事によれば、コントロールグリッドのピッチも変更しているとのことだが、今度改めて確認してみます。)

 

以下に、国産のUY-235を紹介します。

 

マツダ UY-235

刻印両丸。反対側の管壁には○にマツダのマーク。構造は、RCAの後期型を踏襲しているのが解る。

ガラスビード支持。スクリーングリッドがテーパー状となっていない後期型。内部を良く見ると、グリッドピッチが変えられてリモートカットオフとなっているのが解る。

 

以下に、STタイプを紹介します。

 

Raytheon 51/35

刻印4ピラー。ダブルネーム。

 

Gold Seal M35

こちらは珍しいMG管。アルミ製のシールドケースに黒色塗料が塗ってある。プリントは、"GOLD SEAL"と"35"となっている。

 

残りの球も見つけ次第追加します。

 

(2009/02/14)

(2009/02/28)

(2018/06/30)

(2018/08/26)

(2020/01/26)

 

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